約 1,746,380 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9385.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百二十六話「輝け!ウルティメイトフォースゼロ」 根源破滅海神ガクゾム 根源破滅飛行魚バイアクヘー 宇宙海人バルキー星人 登場 異常に暑い日が続き、海に涼を取りにやってきたルイズたち。しかしそれは逆襲を目論む バルキー星人の罠だった! ルイズたちが人質にされ、才人に海の怪獣軍団が差し向けられたが、 ウルティメイトフォースゼロの力で撃退に成功。ルイズたちも救い出し、残すはバルキー星人 ただ一人かと思われた。 だがバルキー星人は切り札の怪獣を残していた! しかもただの怪獣ではない。強大な闇の 力を持つ根源破滅海神ガクゾムだ! 暗黒の脅威にどう立ち向かうか、ウルティメイトフォースゼロ! 「グアァ――――――――!」 海より現れたガクゾムの威容を見上げたルイズたちは、背筋に寒いものが走って一様に震え上がった。 「な、何なのあの怪獣は……! 威圧感が半端じゃないわ……!」 冷や汗まで垂らしたルイズがそうつぶやいた。彼女たちもまた、生命としての根源的な 本能により、ガクゾムに充満する闇の力に危険を感じ取っているのだった。 そしてガクゾムの出現とともに、快晴の青空に異常なスピードで暗雲が立ち込め、辺り一帯が 暗黒に覆われていく。 「な、何だこの現象は!?」 「暗くなっただけじゃなく、急に寒くなってきたよ……!」 突然のことにギーシュがたじろぎ、マリコルヌがブルブル身震いした。暗黒が空を覆うと ともに、熱がその暗闇に奪われたかのように気温が低下したのだ。 「あの怪獣が、この現象を引き起こしたのか……!?」 レイナールのひと言に、オンディーヌはますます震え上がった。周囲の環境にまで干渉するとは、 それだけ計り知れないパワーがある証拠。果たしてそんな力を持つあの怪獣に、ウルティメイト フォースゼロはどう戦うのか。ここから先は、彼らの戦いを見守ることしか出来ない。 「……!」 オンディーヌが不安を覚える中、ルイズは固唾を呑んでゼロたちの背中を見上げていた。 「グアァ――――――――!」 ウルティメイトフォースゼロの四人を見据えたガクゾムは、己の両腕を彼らに向けてまっすぐ 伸ばした。 その腕の先より、怪光弾が発射される! 『うおあぁぁッ!?』 怪光弾はゼロたちの足元に着弾して凄まじい爆発を引き起こし、四人を纏めて吹っ飛ばした。 『ぐッ……すげぇ威力の攻撃だッ!』 受け身を取って起き上がったゼロがうめく。 「グアァ――――――――!」 ガクゾムはそのまま攻め手を緩めず、ゼロを狙って怪光弾を連射する。 『うおおおおッ!』 光弾の爆発の連続がゼロを襲う! 「ゼロッ!」 思わず叫ぶルイズたち。ガクゾムの猛攻の前にゼロは反撃に転じる間もなく、ただやられる ばかりかのように思われたが、しかし、 『はぁッ!』 そこにミラーナイトが躍り出て、ディフェンスミラーを展開。光弾を防ぎ、ゼロを救った。 しかしディフェンスミラーも連続する光弾の破壊力の前にひび割れていく。 『くッ、長くは持ちません!』 『それだけで十分だ!』 ミラーナイトが時間稼ぎをしている間に今度はジャンボットが前に出て、ロケットパンチを飛ばした。 『ジャンナックル!』 高速で飛んでいったパンチはガクゾムの頭部に炸裂し、ひるませて光弾発射を途切れさせる。 「グアァ――――――――!」 『今度は俺の番だぜ! うらぁぁーッ!』 隙が出来たところにグレンファイヤーが続き、鉄拳を浴びせた。その衝撃でガクゾムは 後ろによろめいた。 『よぉしッ! てあぁぁッ!』 更に持ち直したゼロが空高く跳躍し、斜めに急降下してウルトラゼロキックを放った。 その一撃がガクゾムを大きく蹴り飛ばす。 「グアァ――――――――!」 地面の上に倒れるガクゾム。それでオンディーヌが歓声を上げた。 「おおッ、やった!」 「さすがはウルティメイトフォースゼロだ! あの怪獣相手でも引けを取らない!」 強い絆で結ばれたチームの連携は抜群で、恐ろしい闇の怪獣の力も押し返していた。 『まだまだ行くぜぇッ!』 グレンファイヤーが一気に畳みかけようと前に乗り出した。 がしかし、その瞬間に海面から新たに何かが飛び出してきた! 『んッ!?』 それはゼロたちほどではないが、人間からしたら十分巨大な平たい魚型の怪獣だった。 そのヒレがハサミ状に変化すると、グレンファイヤーの首を挟み込む。 『ぐえぇぇッ! な、何じゃこりゃあッ!』 しかも魚型の怪獣は一体だけではなかった。何匹も海から飛び出してくると、グレンファイヤー、 ミラーナイト、ジャンボットの全身に挟みつく。 『みんなッ!』 『うわぁッ!? 何だ、この怪獣は!』 『み、身動きが取れん……!』 魚型の怪獣はガッチリと三人の身体に噛み込んでいて、動きを大きく阻害する。ゼロは魚怪獣たちが、 ガクゾムの放つ闇の波動に操作されていることに気づいた。 『この魚どもはさしずめ、あの野郎の眷属ってところか……!』 ゼロの推理した通りであった。名を根源破滅飛行魚バイアクヘー。ガクゾムに指揮される 怪獣であり、ガクゾムの武器でもあるのだ。 「グアァ――――――――!」 ミラーナイトたちの動きを封じてから、ガクゾムがまたも光弾を撃とうとする。ゼロはそれを 止めるべく、単身ガクゾムに飛びかかっていった。 『さえねぇぜ! せぇぇぇぇいッ!』 「グアァ――――――――!」 ゼロは宇宙空手の流れるような連撃をお見舞いして、ガクゾムが三人に手出し出来ないように 押し込む。 だがバイアクヘーはまだまだいた。複数のバイアクヘーが空を飛び回りながらゼロに接近し、 背筋にかすめるように斬撃を食らわせる。 『おわあぁぁッ!』 「グアァ――――――――!」 思わずのけぞったゼロに、ガクゾムが腕の打撃を浴びせる。今度はゼロがガクゾムとバイアクヘーに 追いつめられる番であった。 「あぁッ! 危ないゼロ!」 オンディーヌやルイズたちはゼロたちと怪獣の一進一退の戦闘を、ハラハラとした思いで 見守っている。 『くぅッ……!』 ガクゾムとバイアクヘーの波状攻撃に隙を見出せず、防戦一方のゼロ。そしてガクゾムの アッパーで宙を舞う。 「グアァ――――――――!」 『ぐはぁッ!』 だがゼロは吹っ飛ばされて逆さになった姿勢から、ゼロスラッガーを投擲した。 『てぇいッ!』 ゼロは敵に殴り飛ばされた勢いを逆に利用して攻撃のチャンスに活かしたのだ。しかもスラッガーは ガクゾムではなく、ミラーナイトたちに纏わりついていたバイアクヘーを切り裂いて三人を自由にした。 『おお、やった! ありがとうゼロ!』 『感謝する!』 『今度は助けられちまったな!』 『へへッ、ざっとこんなもんよ』 もう同じ手は食らわない。四人は飛んでくるバイアクヘーを片っ端から叩き落とし、近寄ることを 許さなかった。バイアクヘーさえ退ければ、ガクゾムを倒すのは難しいことでもない。 だが、バイアクヘーの真の能力はここからなのだった! 「グアァ――――――――!」 ガクゾムが高々と咆哮すると、全てのバイアクヘーはガクゾムの方に集まっていき…… 何と、ガクゾムの身体と一体化していった! 『何ッ!?』 「グアァ――――――――!」 ガクゾムの胸部に、バイアクヘーが変化して出来た装甲が追加され、両腕はカマ状に変化した。 この姿こそが、ガクゾムの本当の戦闘形態なのである。 「グアァ――――――――!」 早速両腕のカマから怪光弾を発射するガクゾム。その威力は形態が変化したことに合わせて 向上しており、ディフェンスミラーを一撃で叩き割ってミラーナイトを吹き飛ばす! 『うわぁぁぁぁッ!』 『ミラーナイトッ!』 『こんにゃろぉぉぉーッ!』 グレンファイヤーとジャンボットが殴り掛かっていくが、ガクゾムが振り回したカマによって 弾き返されてしまった。 『おわあああッ!』 『ぐあぁッ!』 『グレンファイヤー! ジャンボットッ! このッ!』 ゼロが三人の仇討ちとばかりにワイドゼロショットを発射。 「セアァッ!」 「グアァ――――――――!」 だがガクゾムの胸部装甲が、ワイドゼロショットを全て吸収した! 『何だとッ!?』 ガクゾムは光のエネルギーを闇に変え、暗黒光線をゼロに撃ち返す。 『うわああああ――――――――――ッ!』 あまりに強烈な一撃に、ゼロもまた大きく吹っ飛ばされて地面に叩きつけられた。大きな ダメージを受けたことで、カラータイマーが点滅する。 「ああッゼロぉッ!」 ルイズたちの悲鳴がそろった。一方でガクゾムの背後に控えるバルキー星人は、愉快そうに 高笑いを上げる。 『ナ――――ハッハッハッハッハッ! 思った通り、いやそれ以上のパワフルさだぜぇーッ! さぁ、ウルティメイトフォースゼロにとどめを刺すんだッ!』 「グアァ――――――――!」 すっかり気を良くしたバルキー星人が命ずると、ガクゾムはカマに闇のエネルギーを充填し、 「グアァ――――――――!」 一気に発射した! ……ただし、バルキー星人の方にだ! 『なぁぁ――――――――――――――ッ!?』 完全に予想外のガクゾムの行動にバルキー星人は対応できず、怪光弾をもろに食らってしまった。 そして瞬時に爆散して、消滅してしまう。 『なッ……!?』 あまりのことに驚愕するゼロたち。ガクゾムは強力すぎて、バルキー星人に制御し切れる 怪獣ではなかったのだ。 「グアァ――――――――!」 バルキー星人を抹消して、ますます獰猛さを駆り立てるガクゾムの様子に身を強張らせるゼロたち。 『何という凶暴性……! あんなものを野放しにしていては、ハルケギニアは滅茶苦茶に なってしまいます……!』 『うむ……! 絶対にここで食い止めねばならんな……!』 『やるこたぁ一つだけだッ! シンプルに、ぶっ倒すまでよッ!』 『ああ! みんな行くぜぇッ!』 立ち上がったゼロたちは戦意を奮い立たせ、改めてガクゾムに挑んでいく。 『おおおおおおおッ!』 光線技は吸収されてしまうので撃つことは出来ない。そのため四人は敢然と肉弾戦を仕掛けていく。 「グアァ――――――――!」 しかしガクゾムは単純なパワーも底上げされているのだ。グレンファイヤーの拳でさえ ガクゾムは揺るがず、カマの振り回しや蹴り上げで四人を片っ端から薙ぎ倒していく。 『ぐわぁぁッ!』 『ぐッ、ジャンミサイル!』 『であぁぁッ!』 ジャンボットがミサイルを、ゼロがスラッガーを飛ばした。しかしこれらもカマに叩き落とされ、 通用しなかった。 「グアァ――――――――!」 ガクゾムは両腕を伸ばし、カマの先端から光弾を乱射。ゼロたちを四人纏めて爆発の中に呑み込む。 『うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』 四人掛かりでも、強化されたガクゾムの前に追いつめられる。ガクゾムは戦っていく内に 消耗するどころか、どんどんと力を上昇させているようにすら見えた。 そしてガクゾムが暴れるにつれて、空を覆い隠す暗闇の濃度が上がっていくようだった。 「こ、このままではまずいぞッ! やられてしまうッ!」 「この世は闇に閉ざされてしまうのか……!?」 オンディーヌは冷や汗で汗だくになっている。周囲を覆う暗闇が、彼らの心をも弱気にさせているのか。 しかしそこに、ルイズがそんな弱気を吹き飛ばすかのような大声で唱えた。 「いいえ! そんなことにはならないわ!」 ルイズの表情には、こんな状況になっても消えずに光り輝く希望と、ゼロたちへの固い 信頼が窺えた。 「ゼロたちの光は、どんな暗闇にも負けることはない! それを何度もわたしたちに見せて くれたじゃない!」 「ルイズの言う通りだわ。ゼロたちはあんな乱暴な奴に屈したりはしないわよ!」 ルイズの意見にキュルケを始めとして、シエスタ、タバサらが賛同を示した。 彼女たちは知っているのだ。幾度もの戦いの中から目にしてきた、ゼロたちの本当の意味での強さ。 そしてその強さに信頼を置き、それが希望につながっている。 ゼロたちを信じるルイズは、彼らに応援の言葉を叫んだ。 「がんばって、ゼロぉぉッ!」 すると爆炎の中から……ウルティメイトフォースゼロの四人が堂々と立ち上がった! そして口々に語る。 『まだまだこんなものでは負けませんよ……!』 『我らを応援する声がある。その期待は裏切らん!』 『いい気になってんじゃねぇぜぇ! こっからが俺たちの底力が発揮する時だッ!』 『闇の化身め。見せてやるぜッ! 俺たちの光をッ!!』 ゼロが叫ぶと、四人の身体から光が溢れ出始めた。その光は徐々に高まるとともに、四つが 合わさって大きな一つになっていく。 「グアァ――――――――!?」 これを見たガクゾムは己にとっての危険を感知したのか、先ほどまで以上の勢いで怪光弾を 放って四人を攻撃する。だが彼らの光はガクゾムの攻撃によっても消えることはなかった。 『よぉし、行くぜぇみんなッ!』 『はい!』『うむ!』『おぉッ!』 ゼロの号令により、四人は同時に地を蹴った。そうして四人が星の如き輝きの巨大な光の 弾丸となって合体する。これぞウルティメイトフォースゼロの力と心、そして光が一つに なった時に使用することが出来るとっておきの切り札、ウルティメイトフォースゼロアタックだ! 相乗効果によって増幅された光の威力は、闇の存在に対して計り知れない効果を発揮する! 『うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!』 合体した四人は流星さながらの勢いで飛んでいき、怪光弾をはねのけてガクゾムに正面から激突した! 「グアァ――――――――!!」 最大威力の体当たりを食らったガクゾムは、四人の光を吸収することも出来ず、木端微塵に なって吹っ飛んだ! 「おおおおおッ!」 あっと驚かされるオンディーヌ。ガクゾムを見事粉砕したゼロたちは元の状態に分かれ、 砂浜の上に着地した。 『やったな……!』 『ええ。見て下さい、空も晴れていきます』 ミラーナイトの言う通り、ガクゾムの撃破とともに暗黒に包まれていた空に太陽の明かりが戻り、 元の青空が帰ってきた。 まばゆい日差しを浴びたことで、全ての危険が去ったことを実感したオンディーヌが大歓声を上げた。 「おぉッ! 太陽の光だぁッ!」 「やったぞぉー! ゼロたちの勝利だぁーッ!」 「ありがとう、ウルティメイトフォースゼロ!」 ゼロたちに向かって大きく手を振るギーシュたち。ルイズ、シエスタ、タバサ、キュルケの 秘密を知る者たちも、ゼロたちを見上げてうなずいた。 彼らに向かってうなずき返したゼロたちは、まっすぐに空高くに向かって飛び上がり、 この場から引き上げていった。 「……おぉーい! みんなー!」 そして才人が大きく手を振りながら、波打ち際を走ってルイズたちの元に戻っていった。 振り返ったギーシュが言う。 「あッ、きみ、今戻ってきたのかい! 全く、何というか、きみはいつも間が悪いな! 一番いい ところにいないのだから」 「ああ、ゼロたちはもう帰ったのか。いやぁ、今度はどんなすごい戦いしたのか見たかったなぁ」 すっとぼける才人に、ルイズが近寄っていって呼びかけた。 「サイト、ありがとう。また助けてもらっちゃったわね」 才人はルイズにニッと笑い返した。 「いいってことだよ。何たって、俺はお前の使い魔なんだからな」 戦いが終わり、才人も戻ったところで、オスマンがホッホッと笑いながら言葉を発した。 「いやはや、全くとんだ慰安旅行になってしもうたが、諸君が無事でひと安心じゃわい。 さて、これで暑さともお別れじゃから、着替えて学院に帰ろうではないか。皆、忘れ物の ないようにするんじゃぞ」 「分かりました、オールド・オスマン!」 オスマンの後に続いて宿に戻ろうとするオンディーヌの背中に、キュルケが呼びかける。 「あらあなたたち、何か忘れてるんじゃないかしら?」 「えッ、何か忘れてるって……」 ギーシュたちは、女子が一様に自分たちに冷たい眼差しを向けていることに気がついた。 「あたしたちを着せ替え人形みたいにして弄んだ罰がうやむやになったままだわ」 「学院に帰ったら、先生たちに掛け合ってあんたたちの奉仕活動の期間を伸ばしてもらうからね! オールド・オスマンにも処罰を受けてもらいますよ!」 モンモランシーが憤然として言いつけた。それでギーシュたちはガビーン! とショックを受ける。 「そ、そんなモンモランシー! 勘弁してくれ! ぼくらはきみたちを助けたじゃあないか!」 「何が助けた、よ! サイト以外は何もしなかったでしょ!?」 「そ、それはなりゆき上そうなっただけだよ! 助けたい気持ちはぼくたちにもちゃんとあったさ!」 「言い訳しないッ!」 「わしは学院長で、しかも老体じゃぞ!? ちょっとは労わってほしいのう……」 「学院長でも老体でも、何をしてもいいことにはなりませんよ! そもそもの元凶はあなた でしょうが!」 モンモランシーにきつく叱られ、しょんぼりと肩を落とすオスマンだった。 才人の方も、ルイズにこう言いつけられる。 「あんたも帰ったら、わたしたちにご奉仕をしてもらおうじゃない。メイドの格好して働いて もらおうかしら」 「えぇッ!?」 「あッ、それいいですね! ミス・ヴァリエール!」 シエスタはノリノリで乗っかったが、当の才人はルイズに抗議。 「そりゃあんまりだろ! 俺、お前たちのために命懸けで頑張ったのに!」 「それとこれとは別よ! いい加減すぐ調子に乗る癖、ちゃんと反省して改善しなさい!」 ルイズにきつく叱りつけられ、負い目のある才人は反論できずにがっくりうなだれた。 その様子にシエスタたちは思わずアハハハとおかしそうに笑う。 そうして一行は、肩を落とす者と笑う者を交えながら、魔法学院へと帰っていったのであった。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9016.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第五話「魔法学院の青い石(前編)」 磁力怪獣アントラー 登場 トリステイン王国の首都、トリスタニアをクール星人やピット星人などの宇宙人連合が襲撃した事件によって、 侵略者を圧倒的な力で蹴散らしトリスタニアを救ったウルトラマンゼロの名前は一気にトリステインはおろか ハルケギニア中に広まった。実際に彼に救われたトリスタニアの民は、ゼロを「始祖ブリミルが遣わした平和の使者」 と呼んで感謝し、隠れて崇拝する者まで出ていた。 また、トリステイン王宮は怪獣、そして宇宙人の脅威を直に見せつけられて危機感を覚えたことで、 それまで遅々として進まなかった対策会議が急ピッチで進み出した。宇宙人により大打撃を食らった王国軍も、 一日も早い建て直しが進められることとなった。 とはいえ、ウルトラマンゼロの正体が魔法学院の一生徒、ルイズの使い魔である平賀才人であることを知っている者はいない。 そのためルイズと才人は急激に変わりつつあるトリステイン社会の影響を受けることなく、魔法学院で平穏な日々を過ごしていた…… と言いたいところだが、実はそうでもなかった。また新しい事件が、彼らの身に降りかかったのである。 「ミス・ロングビル……手綱なんて付き人にやらせればいいじゃないですか」 トリステイン魔法学院の近くにある森の中の道を進む、屋根ナシの荷車のような馬車に乗っている 四人の内のキュルケが、御者を務めているロングビルに話しかけた。するとロングビルは にっこりと笑って返答する。 「いいのです。わたくしは、貴族の名をなくした者ですから」 キュルケはきょとんとした。 「だって、貴女はオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」 「ええ、でも、オスマン氏は貴族や平民だということに、あまり拘らないお方です」 「差しつかえなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」 ロングビルは微笑んではぐらかそうとするのだが、キュルケはそんな彼女ににじり寄る。 「いいじゃないの。教えてくださいな」 諦めの悪いキュルケの肩をルイズが掴んで引き止める。 「よしなさいよ。昔のことを根掘り葉掘り聞くなんて」 キュルケはふんと呟いて、荷台の柵に寄りかかって頭の後ろで腕を組んだ。 「暇だからおしゃべりしようと思っただけじゃないの」 「あんたのお国じゃどうか知りませんけど、聞かれたくないことを、無理やり聞き出そうとするのは トリステインじゃ恥ずべきことなのよ」 ルイズの忠言を無視したキュルケは、イヤミな調子で言い放った。 「ったく……あんたがカッコつけたおかげで、とばっちりよ。あれだけのことがあった直後なのに、 何が悲しくて、泥棒退治なんか……」 ルイズと才人がデルフリンガーを購入して、ウルトラマンゼロがハルケギニアから侵略者たちを追い払った日の晩、 ルイズの部屋にタバサを連れたキュルケが押し入ってきた。彼女はルイズの後で買った大剣をプレゼントにすることで、 才人の気を引こうと考えていたのだ。 その剣はゼロがこき下ろした剣だったので才人は、使いはしないものの日本人精神から 受け取るだけ受け取ろうと思ったのだが、それをルイズが許すはずがなかった。 そしてルイズとキュルケは口喧嘩を繰り広げ、どちらも一歩も引かなかった果てに、 魔法で決着をつけることになってしまった。 当初は決闘になるはずだったが、才人が「危ないからやめろよ」と言ったばかりに、 何故かロープで吊るされた才人を落とす対決となった。そして先攻のルイズが魔法を使ったら、 ロープではなく後ろの壁が爆発。結果的にキュルケの勝ちとなった。 ここで終わればまだ良かったのだが、直後にとんでもない事態が起きた。突然巨大な土ゴーレムが出現し、 ルイズの爆発でヒビの入った壁を破壊したのだ。そこは魔法学院の貴重なマジックアイテムが保管されている宝物庫で、 ゴーレムが去った後には、宝物庫の壁には『破壊の杖と青い石、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』 の文字が刻まれていた。 その翌朝、魔法学院は蜂の巣をつついた大騒ぎとなった。何せ、今世間を騒がす大怪盗フーケに、 この世に類を見ない秘宝が二つも盗まれたのだ。責任追及に走る教師たちをオスマンが諌めていたり、 現場に居合わせたルイズたちが証言をしたりしていると、ロングビルがフーケの逃げた先を掴んで舞い戻ってきた。 すぐに捜索隊が編成されることとなったのだが、教師たちは誰も立候補しない。代わりにルイズと、 彼女に対抗してキュルケ、そして心配したタバサが立候補し、彼女たちとルイズの使い魔の才人、 そして案内役としてロングビルの五名がフーケの逃げ込んだ先の森の廃屋へ出発することとなったのだ。 しかし出発の直前、オスマンはルイズたちに不可思議なことを告げた。 「諸君……最悪、破壊の杖は取り返せんでもいい。だが青い石だけは、絶対に取り返してくれんか。 それさえあれば、たとえフーケの正体を暴けずとも構わん」 その言葉にルイズたちは大いに驚いた。どうしてそんなに青い石だけに固執するのか。 「何故でしょうか? オールド・オスマン。青い石とは、そんなに重要なものなのでしょうか?」 とルイズが尋ねたのだが、はぐらかされてしまった。 「重要というか、何というか……ともかく、このことをよく胸に命じておいてくれ。頼んだぞ」 奇妙に思いつつも、ぐずぐずしていたらフーケに逃げられる。一行はオスマンの命を胸に、魔法学院を後にした。 話は現在の時間に戻る。不平を述べるキュルケを、ルイズがじろりと睨んだ。 「とばっちり? あんたが自分で志願したんじゃないの」 「あんたが一人じゃ、サイトが危険じゃないの。ねえ、ゼロのルイズ。あんたのゼロがウルトラマンゼロのだったら、 そんな心配しなくてもよかったのにね」 「……どういう意味よ」 こんな時でも、キュルケはルイズに対して辛辣だった。 「いざ、あの大きなゴーレムが現れたら、あんたはどうせ逃げ出して後ろから見てるだけでしょ? サイトを戦わせて自分は高みの見物。そうでしょう?」 「誰が逃げるもんですか。わたしの魔法でなんとかしてみせるわ」 「魔法? 誰が? 笑わせないで!」 「ケンカすんなよ! もう!」 バチバチと火花を散らすルイズとキュルケの間を、才人が取り成した。口喧嘩を中断させられたルイズは、 自分について悩む。 (でも、悔しいけど、キュルケの言う通りだわ……。わたしには何の力もない……) ルイズは自分の使い魔の才人に、その中のウルトラマンゼロに目をやる。ゼロは今更言うまでもないし、 才人もどうやら超人的な能力を有しているようなのだ。それにひきかえ、主人のはずの自分には、 普通のメイジにも出来ることすら何一つ出来ない。 (本当に私には、何も出来ることはないの……? そんなの、嫌……!) 今までだって何度も何かしらの力が欲しいとは思っていたが、才人とゼロが隣にいることで、 劣等感は余計に強くなっており、それを拭い去りたいという思いもまた強くなっていた。 馬車は森の深くに入っていき、そこからは徒歩となった。そして一行は、開けた場所に一軒だけ建つ廃屋の小屋を発見した。 「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるという話です」 ロングビルはそう言ったが、廃屋に人のいる気配はない。そこでタバサの提案により、 一番身体能力の高い才人が偵察兼囮を務めて、中にフーケがいれば外に追い出して 皆で集中攻撃する段取りとなった。 そういう訳で、才人はデルフリンガーを抜いて小屋に近づいていった。窓から恐る恐る中を覗き込むが、 一部屋しかない内部に人間の隠れられるような場所はなかった。 フーケはどこに行ったのか。用心しつつも、才人は皆を呼び寄せた。 「誰もいないよ」 タバサが罠のないことを確認し、才人とキュルケの三人で中に入っていく。ルイズは見張りを申し出て外に残り、 ロングビルは偵察してきますと言って森の中に消えていった。 小屋に入った才人たちはフーケの残した手がかりがないかと調べ始め、その末にタバサが チェストの中から『破壊の杖』を見つけ出した。 「あっけないわね!」 「でも、念を押された青い石は見つからない」 「フーケが持ち歩いてるのかしら? だったらフーケ自身を捜さないと……」 二人が話し合っている横で、『破壊の杖』を見た才人が目を丸くした。 「お、おい。それ、本当に『破壊の杖』なのか?」 「そうよ。あたし、見たことあるんだもん。宝物庫を見学したとき」 キュルケが肯定するが、その『破壊の杖』はハルケギニアの人間ではない才人も、見たことがあるものだった。 『こいつはまさか……何だってこんな場所に……』 そしてゼロもまた、故郷の光の国のアーカイブで同じものの写真を見たことがあった。 そのとき、外で見張りをしていたルイズの悲鳴が聞こえた。 「きゃあああああああ!」 「どうした! ルイズ!」 一斉にドアを振り向いた時、小屋の屋根が吹っ飛んだ。そして青空をバックに見えたのは、 巨大なフーケの土ゴーレム。 「ゴーレム!」 キュルケが叫ぶと、タバサが真っ先に反応した。巨大な竜巻を起こして、ゴーレムにぶつける。 しかし、ゴーレムはびくともしない。キュルケも火炎をぶつけるが、それでも意に介さなかった。 「無理よこんなの!」 「退却」 タバサとキュルケは一目散に逃げるが、才人はルイズの姿を探した。 そのルイズは、ゴーレムの背後に立っていた。魔法を唱えて爆発を浴びせるが、それでもゴーレムは健在。 ルイズに気づいて振り返る。 「逃げろ! ルイズ!」 才人の警告を、ルイズは聞き入れなかった。 「いやよ! あいつを捕まえれば、誰ももう、わたしをゼロのルイズとは呼ばないでしょ! ここで逃げたら、ゼロのルイズだから逃げたって言われるわ!」 「いいじゃねぇかよ! 言わせとけよ!」 「わたしは貴族よ。魔法が使える者を、貴族と呼ぶんじゃないわ」 ルイズは杖を握り締めた。 「敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!」 爆発を食らわせるが、ゴーレムは土がこぼれるだけだった。そしてゴーレムは、ルイズを踏み潰そうと足を振り下ろす。 もうダメかとルイズが目をつぶった時、才人が烈風のごとく走り込んできて、ルイズを抱きかかえて地面に転がった。 そして才人が叱る。 「貴族のプライドがどうした! 前に言ったろ! 死んだら何もかも終わりって!」 するとルイズの目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。 「だって、悔しくて……。わたし……。いっつもバカにされて……」 才人はルイズの抱えている思いを知り、困惑するのだが、そうしている暇はない。ゴーレムはなおも二人を狙っているのだ。 「少しはしんみりさせろよ!」 ずしんずしんと地響きを立てて追いかけてくるゴーレムからルイズを抱えて逃げる才人。 幸い、身体が重いためかスピードは才人とあまり変わらない。 そこにタバサを乗せた風竜が飛んでくる。タバサのシルフィードだ。 「乗って!」 タバサが叫ぶが、才人はルイズを彼女たちに託しただけだった。 「早く行け!」 タバサは無表情に才人を見つめていたが、追いついてきたゴーレムが拳を振り上げるのを見て、 やむなくシルフィードを飛び上がらせた。 一人残った才人は跳びさすって拳から逃れると、デルフリンガーを構え直した。 「悔しいからって泣くなよバカ。なんとかしてやりたくなるじゃねえかよ」 怪獣が相手ではないので、ウルトラマンゼロの力は借りられない。それに借りるつもりもない。 相手が人間、メイジの作ったものだというなら、自分の、あの少女の使い魔の力で勝利を掴みたい。 「たかが土っくれじゃねえか。こちとら、ゼロのルイズの使い魔だっつうの」 「へへッ、いい啖呵切るじゃねえか、相棒!」 デルフリンガーが才人を称賛した。 才人は単身ゴーレムに斬りかかるが、相手は巨大。彼の斬撃では身体の一部を削り取るので精一杯だ。 しかも敵は命を持たない土人形なので、ダメージなど意に介さず戦い続ける。時間が経つにつれて、 どんどんと才人が追い詰められる。 その様子をシルフィードの上から見ているルイズはどうにか助けたいと思うのだが、ゴーレムが激しく暴れるので、 近づくことすら出来ない。何か役立つものはないかと見回していると、タバサが抱えた『破壊の杖』に気づいた。 「タバサ! それを!」 タバサから『破壊の杖』を受け取ると、彼女の『レビテーション』で地上へ降ろしてもらう。 『破壊の杖』を使ってゴーレムを倒そうという算段だ。 だが『破壊の杖』は、彼女が生涯で一度として見たことのない奇妙な形をしていた。本当にマジックアイテムなのか。 大きく振ってみるが、何も反応しない。 そうしていると、ルイズが『破壊の杖』を持って降りてきているのに気づいた才人が、 ゴーレムの隙を突いて彼女の下まで駆けていった。 「サイト! 使い方が、わかんない!」 訴えるルイズから『破壊の杖』をもぎ取ると、両手でしっかりと構えて先端をゴーレムに向ける。 「これはな……こう使うんだ」 と言いながら、才人は自分が『破壊の杖』と呼ばれているものの使い方を理解していることに、自分で驚いていた。 『破壊の杖』。その銀色のボディに黒のラインが一本走った形状は、間違いなく自分の世界の武器であった。 怪獣頻出期の初期、「ウルトラマン」という存在がまだ初代ウルトラマンしか地球人に知られていなかった頃の防衛隊 「科学特捜隊」の主武装、スパイダーショットに違いないのだ。だが才人はその存在は知っていながらも、 安全装置の外し方までは知らないはずなのだ。 「ままよ!」 混乱しつつも、これを使わない手はない。トリガーを引くと、砲口から熱線が発射され、ゴーレムに命中する。 その途端にゴーレムが大爆発を起こした。上半身が完全に飛び散り、残った下半身も崩れ落ちて、ただの土の塊に戻った。 「ひゅー! すっげえ威力だな! おでれーた!」 背に戻されていたデルフリンガーが歓声を上げた。 ゴーレムが倒されると、ルイズは腰が抜けたのかへなへなと座り込んだ。キュルケは隠れていた木陰から出てきて、 才人に駆け寄る。 「サイト! すごいわ! やっぱりダーリンね!」 一方タバサはシルフィードから降りると、ひと言尋ねかける。 「フーケはどこ?」 全員がフーケのことを思い出して辺りを見回すと、ちょうどロングビルが茂みの中から彼らの下へと出てきた。 「ミス・ロングビル! フーケはどこからあのゴーレムを操っていたのかしら」 キュルケが尋ねると、ロングビルは首を横に振る。それで全員の気がそれた隙に、 ロングビルは素早く才人の手の中からスパイダーショットを取り上げた。 「ロングビルさん?」 怪訝な顔をする才人から離れたロングビルが、スパイダーを四人に向けて突きつけた。 「ご苦労様」 全員が唖然とし、ルイズが問いかける。 「どういうことですか?」 「さっきのゴーレムを操ってたのは、わたし」 淡々と答えたロングビルが眼鏡を外すと、優しそうだった目つきが猛禽類のように鋭くなる。 「そう。わたしが『土くれ』のフーケ。さすがは『破壊の杖』ね。私のゴーレムがばらばらじゃないの!」 タバサが杖を振ろうとするのを、ロングビル……いや、フーケが制する。 「おっと。動かないで? 破壊の杖は、ぴったりあなたたちを狙っているわ。全員、杖を遠くに投げなさい。 そこのすばしこい使い魔君は、剣を投げなさい。あんたは武器を握ってると、どうやらすばしこくなるみたいだから」 仕方なく、全員が命令に従う。それからルイズが怒鳴る。 「どうして!?」 「そうね、ちゃんと説明しなくちゃ死にきれないでしょうから……説明してあげる」 フーケは妖艶な笑みを浮かべて説明を始めた。 「私ね、『破壊の杖』と『青い石』を奪ったはいいけれど、『破壊の杖』は使い方がわからなかったのよ」 「使い方?」 「ええ。振っても魔法をかけても、この杖はうんともすんともいわないんだもの。杖と銘打っておきながら 使い方がわからないんじゃ、売り飛ばせない。だからあなたたちに、これを使わせて、使い方を知ろうと考えたのよ」 「それで、あたしたちをここまで連れてきたってわけね」 「そうよ。魔法学院の者だったら、知っててもおかしくないでしょう?」 「わたしたちの誰も、知らなかったらどうするつもりだったの?」 「そのときは、全員ゴーレムで踏み潰して、次の連中を連れてくるわよ。でも、その手間は省けたみたいね。 こうやって、きちんと使い方を教えてくれたじゃない」 フーケが説明している中で、才人はゼロに念じて話しかける。 (ゼロ。スパイダーを取り戻してフーケを捕まえるのに、力を貸してくれ。このままじゃみんなヤバい) 『ああ、いいぜ。俺たちの世界の武器で危険なことになってるんだったら、俺たちが責任取らないとな』 原則として、ウルトラ戦士はその星の住民同士のいさかいに介入してはならない。だが違う星、 違う世界のものが原因である時は別だ。別世界から来た者として、解決に尽力する必要がある。 『狙う時は、奴が撃とうとする瞬間だ。攻撃は、防御を捨てざるを得ないから、最も無防備になる瞬間の一つ。 そこで決めろ!』 (よし、分かった!) 助言を受けて、フーケの指の動きを注視する。 「じゃあ、お礼を言うわね。短い間だったけど、楽しかった。さよなら」 フーケがうそぶいてトリガーに掛けた指の力を強めるその瞬間に、才人が飛び出そうとする。 しかし、それは突然発生した激しい地揺れで遮られた。その場の全員、フーケも、思わず姿勢を崩す。 「な、何!? 突然!」 「この揺れ方……まさかッ!」 才人の不吉な予感はドンピシャで当たった。 「キャ――――――――オォォウ!」 彼らの近くで、森の木々を吹っ飛ばし、クワガタムシに似た大顎を持った昆虫型怪獣が地面から這い出てきたのだ。 かつて中東の伝説の町・バラージを襲い、かのウルトラマンも苦戦せしめた恐るべき大怪獣、 アントラーである。 「か、怪獣!? よりによってこんな時に!」 「このッ! いいところを邪魔して!」 フーケは反射的にアントラーにスパイダーの熱線を発射した。しかしゴーレムを粉砕したその熱線は、 アントラーの甲殻に呆気なく弾かれた。 「キャ――――――――オウ!」 それどころか、アントラーが口から虹色の光線を空に向けて放出すると、スパイダーが 勝手にフーケの手から離れてアントラーへ飛んでいく。 「は、『破壊の杖』が! 泥棒!」 「あんたが言えたことじゃないでしょ!」 思わずツッコミを入れるルイズ。そして見れば、デルフリンガーまでアントラーに引き寄せられて飛んでいっている。 「おわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ! あ、相ぼおおおおおおおおうッ!」 「デルフリンガー!」 手を伸ばす才人だがもう遅かった。才人は端末からアントラーの情報を得る。 「あいつの出す光線は強力な磁力光線なんだ! だから鋼鉄で出来てるものは引き寄せられちまう!」 端末は磁力の影響を受けないようになっているが、だからと言って何か特別なことが出来る訳でもなかった。 と、森の中にそびえ立つアントラーが、何故か地中へと戻っていく。 「な、何? 今ので満足したの?」 「いや……違う! みんな逃げろぉッ!」 「キャ――――――――オォォウ!」 才人の警告の直後に、先ほどよりもずっと近い地面からアントラーが顔を出してきて、 その勢いで五人が吹っ飛ばされる。 「きゃあああああああああああっ!?」 「アントラーは地中を高速で動き回るんだよ!」 「そういうことはもっと早く教えなさいよぉー!」 ルイズが怒って絶叫した。 「うああぁぁッ!」 アントラーに最も近かったフーケは、地面に叩きつけられた衝撃で失神する。 「キャ――――――――オォォウ!」 アントラーは襲う相手を品定めするかのように、五人のことをねめ回す。と、その時、 「きゅーい!」 彼らの下にシルフィードが降下してきた。するとすぐにタバサがシルフィードに跨り、 残りの四人にも促す。 「乗って! 早く!」 言われるまでもなく、キュルケ、ルイズの順に乗り込んでいく。最後の才人は気絶したフーケを背負って跨った。 「フーケまで助けるの!?」 「当たり前だろ! さすがに見殺しにするのはかわいそうだ!」 ルイズに才人が短く答えると、シルフィードが飛び立って、ちょうど振り下ろされてきたアントラーの大顎をかわした。 そのまま飛んで逃げようとするのだが、 「キャ――――――――オウ!」 アントラーが磁力光線を放つと、もう鋼鉄製のものはないのに、シルフィードが引っ張られていく! 「ち、ちょっとぉ! 何で私たちまで引っ張られるのよぉ!」 「血液は、鉄分を含んでるんだ! きっと、それが引っ張られてるから――!」 才人が理由を分析したが、だからと言ってどうにか出来る訳ではない。シルフィードは必死に光線から逃れようとするものの、 引力の強さに抗い切れず、遂に大顎で殴られた。 「きゅいい!!」 「きゃあああああああああっ!!」 シルフィードがはたき落とされ、当然乗っていたルイズらも放り出されて森の木々に突っ込んでいく。 しかしこの時、才人は生い茂る葉で姿が隠れた瞬間に、ウルトラゼロアイを顔に装着した。 「デュワァッ!」 そして森の中から巨大化したウルトラマンゼロが現れ、アントラーを驚かす。 『散々好き勝手してくれたじゃねぇか。だが、俺がこうして出てきた以上、もうそんなことはさせねぇぜッ!』 下唇をぬぐったゼロが啖呵を切り、宇宙拳法の構えを取ってアントラーに対峙した。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/30899.html
登録日:2014/12/31 Wed 09 07 57 更新日:2023/12/23 Sat 19 43 09 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 ゼロの使い魔 ゼロ魔 ナーロッパ ハルキゲニアではない ハルゲニアでもない ハルケギニア ファンタジー 中世 国家 架空の国家 異世界 魔法世界 『ゼロの使い魔』の舞台となる異世界である。 たびたび間違われるが、「ハルキゲニア」ではない。それでは古代生物のほうになってしまう。 いわゆる「ファンタジー世界」であり、人間の他にドラゴンやグリフォン、オーク、精霊など地球では伝説上の存在とされる生物が多数存在する。 空には赤と青の2つの月が浮かんでおり、平賀才人はそれを見て異世界に召喚されて来たのだと(ようやく)気付いた。 地形・地名・文化はヨーロッパに酷似しているが、関連性は不明。 文明レベルは中世から近世のヨーロッパ風。 ここでは劇中に登場した国や地方について記述する。 主要5カ国 + トリステイン王国 君主:マリアンヌ王妃(*1)→アンリエッタ王女(後に女王) 物語の主軸となる国家。 主要国の中では一番の小国で、物語の中でも様々な内憂外患に見舞われる。 国内の貴族の質の低さに悩まされていたが、有能な平民の登用などでの改革を進めつつある。 モチーフはおそらく北フランス。 国内の主な施設や地名 トリステイン魔法学院 本編の主な舞台となる場所。 学院長は世界で最も偉大なメイジと称えられるオールド・オスマン。学年は1~3年。全寮制でかなりの郊外にある。 トリスタニア 王国首都。 魔法学院からは馬で3時間ほどの距離にある。 一番の大通りであるブルドンネ街も幅5メートル程度の広さしかないがアニメ版ではかなり広く描かれていた。 タルブ村 シエスタの故郷。竜の羽衣が奉られていた。名産はワイン。 ラ・ロシェール 港町、空中船用なので世界樹の枯木を桟橋に使っている。アルビオンへの玄関口。 ラグドリアン湖 ガリアとの国境線にある湖。水の精霊が住む。 ヴァリエール領 ルイズの出身地。 タングルテール地方 アニエスの故郷。20年前に滅ぼされた。 ド・オルニエール 才人が恩賞としていただいた土地。広さは30アルパン(10キロ四方に相当) 表向きは1万2千エキューの年収があるとされていたが、領主不在の期間が長かったために過疎化と高齢化が進んでおり、才人が拝領した時には2千エキュー程度にまで税収が落ち込んでいた。 + ガリア王国 君主:ジョゼフ1世→シャルロット女王 5カ国の中では最大の国。主にタバサの冒険の舞台となる。 王位継承権で激しい争いを繰り広げてきており、ジョゼフの即位時にも多数の貴族が粛清された。 しかし国内で問題ごとが発生した場合、超有能ななんでも屋(タバサ)が派遣されてきて解決してくれるので住みやすさでは一番かもしれない。 モチーフは南フランス。 国内の主な施設や地名 リュティス 首都。中心部にはヴェルサルテイル宮殿が聳え立つ。 かなりの都市であり、裏社会には違法性の賭博場などものきをつらねている。 ヴェルサルテイル宮殿 王国の中枢。敷地内に政治の中枢であるグラン・トロワとイザベラの住まうプチ・トロワがある。 東・西・南に分かれた広大な花壇が名物。内乱で一時半壊した。 サビエラ村 なんの変哲もない寒村だが、吸血鬼に目をつけられたことにより阿鼻叫喚の巷と化すことになる。 ファンガスの森 かつて生物の合成実験施設があった森。しかし施設は全滅し、解き放たれたキメラ動物が徘徊する魔境となった。 タバサが最初に任務を受けた場所である。 こんな名前だがウルトラマンダイナが戦ったりはしない。 火竜山脈 凶暴な火竜が生息する危険地帯。しかし珍味とされる極楽鳥の卵が採集できる。 ラグドリアン湖 トリステインとの国境にもなっている。湖畔にはタバサの実家がある。 アーハンブラ城 エルフとの戦争時には前線基地とされていた場所。両種族が取り合いを重ねたことで文化が入り混じった構築になっている。 ◇帝政ゲルマニア 君主:皇帝アルブレヒト3世 多数の都市国家群が集まってできた国家。そのため君主は始祖の血を引いておらず、始祖の血を受け継ぐトリステイン・ガリア・アルビオンの王族よりも格下扱いされている(*2)。 権力闘争の熾烈さはガリア以上であり、アルブレヒトはライバルを強制的に幽閉して帝位を獲得したほどの弱肉強食の世界である。 それゆえに実力や金が身分を決める国柄のため、伝統や権威を重視するトリステインからは嫌われている(*3)。 物語の直接の舞台となったことがキュルケの実家に寄ったときの一度きりであり、国内の細かい状況は不明。 モデルは神聖ローマ(ドイツ)。 ◇アルビオン王国→神聖アルビオン共和国 君主:ジェームズ1世→(共和国)皇帝オリヴァー・クロムウェル 空に浮かぶ巨大な浮遊大陸に存在している国。 しかし共和制を掲げる反乱軍レコン・キスタによって王権は滅亡し、後にトリステイン・ゲルマニア両国と戦争に入る。 軍事力は決して低いものではなかったが、虚無などの想定外の事態が続いて追い込まれ、ガリアの参戦でついに共和国も滅亡する。 敗戦後、領土は分割されて他国の管理下に入ったことまでが語られている。 気候的には寒冷。 モチーフはイギリス。 ※国内の主な施設や地名 ロサイス シティ・オブ・サウスゴータ ウェストウッド村 ◇ロマリア連合皇国 君主:教皇聖エイジス32世(ヴィットーリオ・セレヴァレ) ハルケギニア全土で信仰されているブリミル教の総本山である宗教国家。 教皇の権威は絶大であり、他のいずれの国も逆らえない。 しかし実体は他国からの貧民が群がるスラムと、富を独占する神官の間で極端な貧富の差が存在している。 モチーフはイタリア。 その他の国 ◇ネフテス ハルケギニアの東方にある砂漠地帯サハラに存在するエルフたちの国。 文明レベルはハルケギニアを大きくしのいでいるが文化はやや散文的。 ハルケギニアとの間には広大な森林地帯や灼熱の砂漠が存在するために、行き来は主に空中船に頼らざるを得ない。 モチーフはエジプト。 ◇クルデンホルフ大公国 君主:クルデンホルフ大公 トリステインの中にある自治領。 巨大な経済力を持っていて、トリステイン国内のほとんどの貴族は借金をしているために頭があがらない。 ◇ロバ・アル・カリイエ 厳密には国名ではなく、ネフテスのさらに東の地域全般を指す呼び名。「東方」という言葉は、ほぼこのロバ・アル・カリイエと同義である。 エルフという価値観の大きく異なる民族を挟んでいるため、ハルケギニアとはほとんど交流がないが、紅茶など、わずかに流入する物品があるらしい。シェフィールドはこの地域の出身。 追記と修正お願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] アルビオンの滅亡はウェールズ父が何も考えないで処刑したからだよなぁ -- 名無しさん (2014-12-31 15 13 42) 東には砂漠とエルフの国、その向こうにロバアルカイリエだろ。西の果てには何があるんやろか -- 名無しさん (2014-12-31 15 31 10) 学生時代はこれで世界史の勉強してたな -- 名無しさん (2014-12-31 17 43 26) ハルゲニアのルイズへ届け! -- 名無しさん (2014-12-31 18 03 16) モデルとしては、トリステイン・フランス、アルビオン・イギリス、ゲルマニア・ドイツ、ロマリア・イタリアかな。ガリアはわからん -- 名無しさん (2015-06-28 21 36 50) トリスティンはネーデルラントでガリアはフランス -- 名無しさん (2016-03-19 17 14 36) やっぱ数百年後に西の海のかなたに超大国ができあがるんだろうか -- 名無しさん (2016-06-10 12 50 01) 極東には忍者のいる火の国とか水の国とかがあると妄想 -- 名無しさん (2016-11-03 20 21 20) ↑ぶっちゃけあのNINJA共が同じ世界線にいたらヤヴァイなんてレベルじゃない気が…… -- 名無しさん (2016-11-03 20 23 49) 革命の芽は摘まれてるし、結構ルイズたちの世代の責任でかいよな。この均衡も一世紀はもたんだろうというリアルな緊張感がある -- 名無しさん (2019-03-04 11 35 34) ↑1 そうはいっても、ルイズ達が動かなければ殆どの人間は最終章で明言された大破壊で皆死ぬという…誰がどういう行動を起こしても苦難の道であったことは間違いあるまいよ。 -- 名無しさん (2022-09-04 13 20 26) 再びあの世界が戦乱になった時にヤマグチ先生が生きていたら書いたであろう才人とルイズの子供世代が活躍するのかな? -- 名無しさん (2022-09-10 02 33 43) カンブリア紀にいたハルキゲニアって生物と名前が紛らわしい -- 名無しさん (2022-10-10 14 55 35) 良くも悪くも魔法至上主義社会といった感じの世界。その割には所々で潜在的に平民が台頭するのを恐れてる様子が窺えるので案外メイジも魔法を信用してない。 -- 名無しさん (2023-04-06 12 08 00) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1033.html
前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編 晴れ渡っていた空の元で、ルー……ブルーは洗濯をしていた。 慣れない事ではあったが、まぁ、無理というわけでもなく、 それを完遂した。が、なにぶん慣れない上結構な量だったので、 時間が思いのほかかかってしまった。というか、常識外れな程かかってしまった。 もう生徒達が部屋に戻り始めている時刻である。 干したところで間に合いそうにない。 「困ったな……」 考え込む。その結果、一つのことが思い浮かぶ。 それを実行するために、彼は洗濯物を抱えてルイズの部屋に戻ることにした。 その後ろを、燃えるような赤い髪の少女がつけていった。 場面と時間を飛ばし、ルイズの部屋。 ドアがノックされる。 「ルイズ?」 ルイズはその声に反応する。 確かに彼の声であるのだが、何かが違うような気がする。 なので一応問いかけてみた。 「ブルー……よね?」 「そうだけど、入って良い?」 「良いわよ」 ルイズが許可をだすと、彼女の使い魔は洗濯物を抱えながら、器用にドアを明けた。 その洗濯物を見て、ルイズは言う。 「……なんで洗濯物持って帰ってきてるの?」 「干せる場所がなかったんだ」 「ここでだって干せないわよ」 「いや、何処でも干せるんだけど、ばれるといけないだろう?」 「……?」 怪訝な顔を解かないルイズを半ばほったらかしにするような形で、 彼は部屋の中に洗濯物を干し始める。 「ちょっと!部屋干しすると湿気とかにおいが……」 なんで貴族のルイズがそんなことを知っているかは不明だが、 まぁそれはどうでも良い。 彼はそれに答える言葉ではなく、違う言葉を発した。 「《ライトシフト》」 その瞬間、窓からの日光という光源しかなかったはずの 部屋が明るくなり、陽気に包まれる。 ルイズはそれを感じた。いや、これだけ暖かければ部屋の外の人間でも感じとれたかも知れない。 「さっさと乾かせば平気だよ。それに湿気なんか溜まらないし」 そう言うと、洗濯を干し終わった使い魔は、地面へと座り込む。 が、数瞬後、ドアを勢いよく開けて、褐色の肌の少女が入ってきた。 最初は威勢の良い表情をしていたものの、 部屋に満たされている陽気を感じ取ると、次第に表情に疑問を表す。 入ってきた少女の顔を見て、ルイズは叫ぶ。 「ちょっとキュルケ!勝手に人の部屋に入ってこないでよ!」 「別に良いじゃない。で、この部屋どうなってるの?」 「どうでも良いでしょ!」 「冗談と思っていたけど、その人……本当に魔法が使えるとか?」 その言葉に、ルイズは軽く怒りがあった表情を一変させ、 焦りが主に出ている表情になる。 「ま、まさかそんなはず無いじゃない!平民が魔法なんか使えるはずないでしょ!」 「あら、魔法が使えない貴族がいるんだから、 魔法が使える平民がいてもおかしくないとは思わない?『ゼロ』のルイズ」 その言葉に対し、ルイズは顔をむっとさせ、叫ぶように言う。 「私は『ゼロ』じゃないわよ!ちゃんと使い魔の召喚に成功したじゃない!」 「それだけじゃない」 キュルケはその身から放っている熱気のような雰囲気と全く違う、 冷静な声色で返した。 「それにしても、最近妙に自信たっぷりだったけど、 まさか使い魔の召喚に成功したって理由だけじゃないわよね?」 ルイズは固まった。図星である。 だが、目の前にいるのはラ・ヴァリエール家の仇敵、 ツェルプストー家のキュルケである。言い負けるわけにはいかない。 まぁ、いつもやっている言い合いの勝敗の判定は、 他のどの生徒に聞いても全戦キュルケの勝利なのだが。 ともかく、ルイズはとっさに切り返しを閃く。勿論WP消費1の便利技に非ず。 「ち、違うわよ!そ、そう!今この部屋にかかってる魔法も私がやったのよ!」 ルイズはその返しを自分で上手いと思ったらしく、 腰に手を当てて、胸を張る。それでも”それ”は全く目立たないが、 彼女の名誉のために特定するのは避けることとしよう。 キュルケは、それに対して、短い要求を告げた。 「じゃあやって見せて?」 「え?」 「出来るんでしょ?魔法」 キュルケはルイズが固まったのを眺めていた。 「あー」とか「うぅ」とかのうめき声を上げていたが、 そのうち今までのむっとした表情に戻る。 「じ、じゃあ見せてあげようじゃない」 そう言って杖を構えたところに、今までずっと黙っていた使い魔が口を挟む。 「ルイズ、バレバレだけど……」 「う、うるさいわね!使い魔は黙ってなさいよ!」 その声を無視して、彼はキュルケに言った。 「えーと、キュルケ……って言ったかな。 もう解ってると思うけど」 「……まさか、本当に魔法が使えるの?」 「君たちが使ってる魔法とは違うみたいだけど」 「へぇ、そうなの」 「なに親しげに話してるのよ~!?」 いつの間にか蚊帳の外に置かれたルイズが喚くが、 二人は意にも介さず、会話を続けた。 「それにしても、ブルー……だっけ?」 「そうだね」 「最初は冷たい人かと思ったけど、そうでもないみたいね! ルイズの使い魔なんかやめて私の所に来ない?」 「キュルケ!ブルーは私の使い魔よ!?手出ししないで!」 「あら、決めるのは彼よ?」 キュルケは微笑みを浮かべた。 そのまま、外に出る。 ドアを閉じる前に、最後に言った。 「じゃあねブルー!あなたならいつ来ても構わないわよ!」 そして、ドアが閉じられる。 暖かい部屋で、顔を赤くしたままのルイズと、 飄々とした態度の彼は、静かなままだった。 が、ルイズが少々震えた声で、呟く。 「ブルー」 「なに?」 「ご飯抜きね」 「何で?」 「キュルケなんかと話してるんじゃないのっ!」 「……理不尽だなぁ」 だが、繰り返し言うが、この世界の貴族は 基本的に理不尽がデフォルトである。 「そう言えば、あなたって術だけじゃなくて剣も使えたのね?」 ふと思いついた疑問を、ルイズは自らの使い魔に投げかけた。 その言葉のボールを、彼は彼女が予想もしない方法でキャッチする。 「剣なんて握ったこともないけど」 「使いこなしてたじゃない」 「《光の剣》自体使うの初めてだったんだ」 「……使ったこともない魔法を使ったの?」 「いや、知り合いの人が使うのを見ていたから効果は知ってた」 「……それにしたって、危ないじゃない」 そんなこんなで、この一日は過ぎた。 その次の日。 虚無の曜日であるので、朝食の後、 ルイズと彼女の使い魔は部屋に戻ってきていた。 特にすることも無いのでのんびりしていると、彼女の使い魔が突然言い出す。 「ルイズ」 「何?」 「武器屋は近くにあるのかな?」 ルイズは問われ、思い出そうとしたが、 その前に疑問が生まれたので、まずそれを問うことにした 「知ってどうするのよ」 「剣を買いたいんだけど」 「どうして?」 「さっき、厨房に行ってきたんだけどね」 と、軽く言う自らの使い魔に、 ルイズは疑いのまなざしを向ける。 「……どうして厨房に行ったの?」 その言葉に一瞬固まりはしたものの、 それでも俊敏に切り返した。 「…顔を見せに行ったんだ。その時聞いたんだけど、 どうも僕は剣士で通ってるみたいだ。剣を持ってないと不自然だろう?」 「……術で作り出せばいいじゃない」 「無尽蔵に作り出せる訳じゃないんだ」 そこまで聞いてルイズはようやく納得したらしい。 が、入れ代わるように一つの疑問が浮かぶ。 「……虚無の曜日だから街まで連れて行ってあげても良いけど、お金あるの?」 「あ」 根本的な事にそこで初めて気がついたらしい。 少々遠慮しながらも、彼はルイズに聞いた。 「ルイズ……」 「……剣ぐらい買ってあげるわよ。 使い魔の世話をするのも貴族の務めよ」 じゃあ飯抜くなよ。 その青い髪のょぅ……少女は、自分の部屋で本を読んでいた。 彼女にとって、虚無の曜日は悪いものではない。 いや、休みという以上、 一部の勉強馬鹿以外の大抵の生徒にとっても好まれるものだろうが、 それには特にと言った理由が伴うことはない。 彼女が虚無の曜日を好む理由は、 自らの部屋で落ち着いて読書をしていられるから、という理由があった。 部屋の隅で彼女が先日召喚した使い魔がごろごろしているが、 気にするほど騒がしいことではない。 が、突如その平穏は、ドアのノックと言うには荒々しい音によって打ち破られる。 だが、彼女はその騒音を取り敢えず無視した。 しかし、暫くたっても音が収まる気配はない。それどころか、だんだんと強くなってきている。 それでも、彼女は立ち上がろうとはしなかった。代わりに傍らに置いておいた大きな杖を振る。 そうすると、ドアからの騒がしい音はぴたりと止んだ。『サイレント』と言う、風の魔法である。 それを確認し、彼女は読書へと戻ろうとすると、 ドアが開かれる。彼女は入ってきた人物を知っていたが、それでも本から目を離さない。 入ってきた人物は、キュルケであった。 彼女は何かを騒ぐが、『サイレント』により、その声が青い髪の少女に届くことはない。 次に彼女は本を奪った。それにより青い髪の少女の視線はキュルケに向いたが、 だが何も言わず無表情に、本当にただ視線を向けている、と言うだけであった。 短くはない無い時間が経つ。少女が再び杖を振ると、キュルケが騒ぎ出す。 「タバサ!支度をして!今すぐ出かけるわよ!」 タバサと呼ばれた少女はその言葉に対して、短く、抑揚のない声で告げた。 「虚無の曜日」 そう言うと、キュルケの手にある本を取り戻そうと手を伸ばす。 が、キュルケはそれをタバサの届かない高さまで持ち上げる。 「わかってる!あなたにとって虚無の曜日は読書をする貴重な時間だって! でも、教室でも何処でも本読んでない!?まぁそれは良いの、恋よ!恋!」 それに対しタバサが返答をすることはなかった。 「……解ったわよ!あのね、あたし恋した「いつも」そう言わないで聞いてってば! で、その人が今さっき、ルイズとどっかに出かけたのよ! だから私は二人の後を追って、何処に行くか突き止めて、あわよくば横からかっさらうのよ!」 ルイズとは違う方向性だが、キュルケもなかなかに滅茶苦茶なことを言う。 「二人は馬に乗って出かけたから、あなたの使い魔じゃないと追いつけないのよ!」 その言葉に対し、タバサは初めて疑問という表情を見せる。 彼女の使い魔は部屋の隅でごろごろしている犬っぽいものである。 一応タバサは図書館で調べたのだが、結局解らなかったのである。 ともかく、犬っぽいものでどうやって追いつけと言うのだろうか。 「ほら!あなた竜召喚してたでしょう!?あの格好いい竜!」 それでタバサは思い出したのか、使い魔に伝える。 その使い魔は、それに答え、窓から飛び出した。 「……って、ちょっと、え!何してるの!?」 「変身」 「……はぁ?」 次に、タバサが先ほど使い魔がしたように、窓から躍り出るように飛び降りる。 キュルケは怪訝な顔をしながらも、タバサに続いて飛び降りた。 そして、白い竜にそのまま飛び乗った。 前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9236.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第七十一話「美しい人間の意地」 冷凍怪獣マーゴドン 凍結怪獣ガンダー 宇宙海獣レイキュバス 冷凍怪獣シーグラ 宇宙海人バルキー星人 登場 「行こう、ジャンボット! みんなを救いにッ!!」 『うむ!』 コックピット内でファイティングポーズを取り叫んだ才人に、ジャンボットは力強くうなずいた。 ガンダーの冷凍ブレスにより回路が凍りつき、動けなくなっていたジャンボット。だが才人が内部に入り 操縦者となったことでシステムが再起動、回路も復活して再び立ち上がったのだ! 『ジャンボットが立ちました! サイトのお陰で!』 『うおおおおッ! サイト、やるじゃねぇか! この吹雪の中で!』 ジャンボットの復帰を目の当たりにしたミラーナイトとグレンファイヤーが驚きと喜びの声を上げた。 一方で、レイキュバスとシーグラの怪獣たちは再び動いたジャンボットに刺激されたのか、 彼を攻撃しようとする。 「グイイイイイイイイ!」 「ギャァァァアアア!」 しかしそれを、ジャンボット同様に持ち直したミラーナイトたちが食い止める。 『おっとぉ! 勝負はこっからが本番だぜぇ!』 『彼らには私たちが手出しをさせない!』 グレンファイヤーがレイキュバスを羽交い絞めにし、ミラーナイトはチョップやキックの乱打で シーグラ四体を足止めした。 怪獣たちの猛攻で追い詰められていた二人であったが、才人の勇気と頑張りが彼らの胸にも届き、 再度戦う力を与えたのであった! そして肝心の才人とジャンボットだが、殴り倒したガンダーが起き上がって彼らに襲いかかる! 「プップロオオオオオオ!」 ガンダーはドリル状の爪を振るってジャンボットを引っかく。復活したジャンボットではあるが、 状況は依然として不利なまま。爪の攻撃でダメージを負う。 『うぐぅッ!』 「くぅッ! やっぱり実戦は厳しいな……!」 現在のジャンボットのコントロールは才人が握っているが、彼はガンダーの速い攻撃になかなか 対応できないでいた。グレンファイヤーに鍛えられたものの、やはり付け焼き刃。いきなり実戦で 通用するかと言えばそういうものでもない。本当の戦いは険しいのだ。 だが、才人はグレンファイヤーの教えを思い出しながら反撃を開始する! 「戦いには流れがある……。勢いがある! 一番大事なのは勢いを得ることだ! うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」 振り下ろされる鋭い爪も恐れずに、鬨の声とともにショルダータックル! それが見事に決まって、 ガンダーは大きく吹っ飛ばされて雪の中に沈んでいった。 「プップロオオオオオオ!」 「よしッ! この勢いのままに行くぞ! 次は……あいつだ!」 才人はこの状況で最も倒すべき相手を見据えた。 それはマーゴドン。ガンダーとともにアルビオンを襲う猛吹雪を作り出している元凶だ。こいつを倒せば こちらの動きを制限する吹雪は弱まり、状況を好転できるはずだ。 「ガオオオオオオオオ!」 しかしマーゴドンとてそう容易くは倒されてくれない。全身から冷凍ガスをものすごい勢いで噴出させて ジャンボットを牽制する。この冷凍ガスを攻略するのは至難の業だ。 が、才人には既にマーゴドン打倒の作戦が閃いていた! 「ブースター点火ぁぁぁッ!」 ジャンボットの足裏のノズルからジェットを噴き、ジェット噴流を前方に送る。それが巻き起こす突風が、 冷凍ガスを押し戻してマーゴドン自身に浴びせる。 「ガオオオオオオオオ……!」 するとマーゴドンの肉体が瞬く間に凍りついていった! マーゴドンは冷凍怪獣の中でもトップクラスの 冷凍ガスの持ち主だが、その威力は強すぎて自身の身体までも凍ってしまうほどだったのだ。 そして、凍ったものは衝撃に弱くなるのである。 「今だ! ジャンナァックルッ!!」 すかさずうなるジャンナックル! ロケットパンチがマーゴドンに激突すると、怪獣の全身が 一瞬にして粉々に粉砕された。 吹雪の発生源の一つが潰されたことで、ウルティメイトフォースゼロを襲っていた猛吹雪の勢いが弱まった! 『いよっしゃあぁぁぁッ! これで動きやすくなったぜぇッ!』 それによりグレンファイヤーの挙動が目に見えて良好になった! レイキュバスのハサミの振り下ろしを 前転でかわし、ミラーナイトを囲んでいるシーグラたちへ向けて熱エネルギーを溜める。 『いっくぜぇぇぇッ! グレンスパァァァ―――――クッ!』 それまでの鬱憤を晴らすかのような、もしくは才人の熱気に負けないとするかのような、いつも以上に パワーを込めた攻撃。ミラーナイトが跳躍して逃れた直後に、シーグラ四体のど真ん中に着弾した! 「ギャァァァアアア!!」 巻き起こる大爆発! シーグラたちは纏めてその爆炎の中に消え去った。 「プップロオオオオオオ!」 積雪の中からガンダーが飛び出した。ジャンボットの背後に回り込み、さっきのお返しとばかりに 不意打ちを狙っている。 だがそれをミラーナイトが許さなかった! 『はぁぁぁぁッ!』 空中から放ったミラーナイフ二連発がガンダーの両腕を根本から切断。そしてシルバークロスが 炸裂してガンダーは十字に切り裂かれた。 ガンダーも倒されたことで吹雪は完全にやんだ。空を覆い隠していた黒雲は去り、雪に埋まった 森に日光が差し込む。 『雪なんてもう見飽きたぜ! ファイヤァァァァァァァッ!』 その積雪も、グレンファイヤーの発した熱波であっという間に解けていった。これで戦況は完全に こちら側に傾き、残るはレイキュバス一体だけ。 「グイイイイイイイイ!」 しかしここからレイキュバスが粘る。ハサミを振り回してグレンファイヤーの接近を阻み、目の色を 赤と青に切り替えながら火炎弾と冷凍ガスをばら撒いて、ミラーナイトとグレンファイヤーに猛然と 攻撃を加えた。二人の遠距離攻撃は、強固な装甲に弾かれてダメージとならない。 『ちッ! 存外に骨があるじゃねぇか! 甲殻類なのに!』 『思った以上の難敵ですね……』 数の差にも負けないレイキュバスの底力にてこずるミラーナイトたち。これが大怪獣の意地なのだろうか。 だが、意地ならば人間の才人も負けてはいなかった! 「よし! バトルアックスだ!」 相手は防御の固い相手なので、破壊力の高いバトルアックスを手に取る。そして勇敢にも レイキュバスの正面から挑んでいく! 「グイイイイイイイイ!」 迎え撃つレイキュバスのハサミは、バトルアックスにも劣らぬ恐ろしい切れ味だ。だが、才人は再び グレンファイヤーからの教えを思い返す! 「ハサミの動きだけじゃない、奴全体を見るんだ。そうすれば、軌道が見えてくる!」 才人の意識が、視線が、レイキュバスに集中する。そうして――。 レイキュバスの巨大なハサミを、アックスで切り払った! 「出来た! やれる! あいつの動きについていける!」 両のハサミの乱打をかわし、あるいは打ち払っていく才人。しかし途中でデルフリンガーが声を上げた。 「相棒、右じゃねえ! 口からの攻撃だ!」 咄嗟にその言葉に従うことで、フェイントからの火炎弾も回避することが出来た。 「経験の足りねえ分は、俺が補佐してやるぜ」 「デルフ、ありがとう!」 デルフリンガーの協力で、徐々にレイキュバスを追い詰めていく。 そしてハサミを上に弾いたことで、レイキュバスが大きく仰け反る! 「グイイイイイイイイ!」 「今だぁッ!」 その隙を見逃さず、グルリとその場で回転してアックスに遠心力を乗せた! 『必殺! 風車ぁぁぁぁぁぁッ!!』 ジャンボットと声が重なり、必殺の兜割りを叩き込む! レイキュバスの甲殻に大きな亀裂が走った! 『シルバークロスッ!』 『グレンスパークッ!』 そこにダメ押しの援護攻撃! それが突き刺さったことで、レイキュバスは木端微塵に爆散した! 「やった……! 勝ったッ! 勝ったんだぁぁぁッ!」 全ての怪獣を倒したことで、才人は大歓喜の声を高らかに発した。グレンファイヤーも祝福する。 『サイト、やったじゃねぇか! へへッ、ちょいと感動しちまったぜ!』 『あなたがいなければ私たちはやられてました。深く感謝します』 『サイト、本当にありがとう! 君はまさしく勇者だ!』 三人から口々に称えられ、才人は若干気恥ずかしそうにはにかんだ。 見たか、ポール星人。これが人間の力。どんな時もあきらめずに突き進む心。その精神は、どんな挑戦にも 決して負けることはないのだ。 吹雪がやんだことで、ルイズとシエスタの視界も晴れていた。二人は並び立つジャンボットたちの 勇姿を見上げている。 「ミス・ヴァリエール、ご覧下さい! ジャンボットさんたちが助けてくれましたよ! ……でも、ゼロ…… サイトさんの姿はやはりありませんね……」 シエスタはゼロがこの場にいないことに少し落胆した様子だった。 しかしルイズは違った。ウルティメイトフォースゼロの戦いを知る彼女は、ジャンボットの戦い方に 違和感を覚えていた。 「ジャンボット……いつもよりも戦い方が荒々しかったような……。何というか、勢い任せというか、 やんちゃというか……」 そしてそんな戦い方をする人間を彼女は知っていた。いつもすぐ近くで見ていた、あの……。 「まさか……サイトが乗ってるの!?」 ルイズたちの姿を、才人の方からもコックピットから視認した。 「ルイズ!? シエスタも……。どうしてこんなところに?」 『決まってるだろう。君を捜しに来たんだ。二人とも、君の生存を信じてここまで来てくれたんだぞ』 驚く才人にジャンボットが教えた。彼は当然、シエスタからこのことを聞いていたのだ。 『それでサイト、どうするのだ? 君はルイズに会いたくないとミラーナイトから聞いたのだが』 ジャンボットの問いかけに、才人はこう答えた。 「いや、俺を降ろしてくれ! あの二人に、ただいまって言わなくちゃ!」 それを聞いて、ジャンボットは笑ったようだった。 『了解した。すぐに地上へ転送しよう』 その言葉通り、ジャンボットの足元に才人が転送される。外に出た彼はすぐに、ルイズたちの方へと駆けていく。 「おーい! ルイズー! シエスター!」 「サイト! 本当にサイトだわ……! もう……今まで何やってたのよ……」 「わぁわぁ! サイトさん、ほんとに生きてたんですね……。良かった……」 二人は才人の無事な姿を確認して、涙ぐんでいた。そちらへ向かって、元気良く走っていく才人。 先日までは、もう自分にルイズの側にいる資格がなくなったと言って無事を知らせるのを拒否していた。 しかし、今はそれが自分に吐いていた嘘だと分かる。本当は、弱くなった自分のありさまをルイズに 見せたくなかったのだ。その本音を認めたくなくて、ごまかしていた。 だが今は違う。グレンファイヤーに鍛えられ、ありったけの勇気で怪獣に立ち向かったことで、すっかりと 自分に自信がついた。そしてやっぱり、ルイズたちの元にいたいという気持ちを自覚した。今度は、己に嘘は吐かない。 ずっと無事を知らせなかったこと、ルイズは怒るかもしれない。それでもいい。もう一度、 ゼロの使い魔をやっていきたい……! 「相棒、止まれぇッ!」 突然、デルフリンガーが叫んだ。 その指示を聞いていなかったら、才人はいきなり降ってきた巨大な刃に潰されていたことだろう。 「えッ!?」 驚愕する一同。見上げると、剣とリングを足したような武具を持つ、金属製の仮面のような頭部の 黒い巨人がいつの間にか現れていた! 『ハッハーッ! ユーはウルトラマンゼロの変身者だなぁ! こんなところにいるとはアメージング!』 「ば、バルキー星人!」 正体は侵略者バルキー星人! かつて地球の海で怪獣サメクジラを操り、船舶を次々沈めて 多大な死者を出した凶悪な宇宙人だ! 『ビッグな異常気象が起きたんで、様子を見に来て正解だったぜぇ! 今のユーはゼロに変身できない みたいだなぁ! 変身できないゼロなど恐ろしくもない! そこを仕留められるなんて、ミーはスーパーラッキーだぜぇ!』 やはり、狙いは才人! ジャンボットたちは色めき立つ。 『待て! そんなことは許さん……!』 『シャラーップ!』 すぐにバルキー星人を取り押さえようとしたが、バルキー星人が額の発光部から光線を放って三人を先制攻撃した! 『ぐわぁぁぁぁぁッ!』 爆発でそろって転倒するミラーナイトたち。彼らは吹雪の中での冷凍怪獣軍団との苦闘の直後なので、 疲弊し切ってしまっているのだ。 彼らが手出しできない内に、バルキー星人は才人を殺してしまおうとする! 「くッ……! やられてたまるか!」 「サイト!」「サイトさん!」 ルイズとシエスタを巻き込まないように、才人は全速力で二人から離れて逃げていく。 それを追い掛けていくバルキー星人。ルイズは杖を抜いて『爆発』でバルキー星人を倒そうと考えるも、 「詠唱が間に合うかしら……!?」 『虚無』の詠唱の完成には時間がかかる。それまで才人が逃げ切れるかどうか……。しかし、 今取れる手は他にない。ルイズは才人が逃げられることを必死に願いながら、出来る限り早口で呪文を唱え出す。 一方の才人は全力で逃走するも、巨大なバルキー星人とは歩幅が違いすぎる。とても振り払うことは 出来ず、向こうが撃ってくる光線をぎりぎりでかわすのがやっと。 「相棒、ここまで来てやられるな! 意地でも生き延びるんだ!」 「分かってるさ……!」 デルフリンガーが鼓舞するものの、物理的に不可能なことがある。光線が才人の周囲全てを火で覆い、 彼の逃げ道をふさいだ! 「しまった!」 『ハッハッハーッ! これでゼロもジ・エンドだぜぇーッ!』 意気揚々と剣を振り上げるバルキー星人。もう才人はそれから逃れることは出来ない。 ああ、才人よ。人間として必死に戦い、輝く勇気を見せたというのに、本当にこんなところで終わってしまうのか!? 「負けるかぁ! 俺は……最後の瞬間まであきらめずに抗い続けるッ!」 それでも……才人はあきらめようとはしなかった。デルフリンガーを構えて、バルキー星人の剣を 迎え撃つ態勢を取る。 明らかに無謀。サイズ差の違いすぎる剣を受け止められる訳がない。だが、そうだとしても…… あきらめることだけは出来ない。したくない。 「人間は……どんな絶望にだって、負けないんだぁぁぁぁ―――――ッ!」 それこそ彼が、ハルケギニアに来てから学んだこと。ゼロと一心同体になり、数々の戦いをともに 駆け抜け、立てた誓い。 どんな状況でも消えない、希望の光。 「……!?」 この瞬間に――それまでずっと消えていたブレスレットのランプに、青い光が灯った! すぐに温かい光に気がついた才人は、左腕を自分の胸の前まで持ち上げる。 そしてウルティメイトブレスレットから……ずっと見たかった例のものが浮かび上がった。 赤と青の縁取りの眼鏡! 「ッ!!」 右手が導かれるかのように動き、『それ』の縁を握り締めた。そして巨大な刃がすぐ頭上に迫る中、顔に装着する! 「デュワッ!」 バルキー星人の剣が、地面を刺し貫いた。 『サイト!?』 「サイトさん……!」 ミラーナイトが、ジャンボットが、グレンファイヤーが、シエスタが愕然となる。 「サイトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」 詠唱の間に合わなかったルイズが絶叫。皆が皆、血の気を失う。 『ハァーハッハハハハハハァ――――! 遂にやったぜぇぇぇぇッ! ウルトラマンゼロは、このミーが抹殺したぁッ!』 ただ一人、バルキー星人だけは勝ちを確信して高笑いする。 だが……彼の剣がひとりでに持ち上がる。 『ん? う、うおぉぉッ!?』 剣は何かの力に払いのけられた。その力の『主』を目の当たりにしたバルキー星人が絶句し、 よろよろと後ろに下がった。 剣が突き刺さった場所からは、赤と青の輝きがどんどんと大きくなっているのだ! そして輝きが宇宙人たちと同等の身長と化した時……輝きが収まっていき、本当の姿がはっきりと見えていく。 皆がずっと待っていた、その勇姿! 『へへッ……待たせたな!』 ぐいっと親指で下唇を拭うその仕草……ミラーナイト、ジャンボット、グレンファイヤーは即座に歓喜した。 『ああ……! 遂に目覚めましたか……!』 『よくぞ戻ってきてくれた……!』 『ハハッ……寝坊が過ぎるぜおいッ!』 シエスタは思わずルイズの手を取ってはしゃぐ。 「ミス・ヴァリエール! あれを……! やっと、帰ってきてくれました!」 「うん……うん……!」 ルイズは安堵と嬉しさの涙をつぅと流し、頻りにうなずいた。 『彼』の中の才人も、男泣きしながら呼びかけた。 『俺……ずぅっと待ってたんだよ……! よかった……本当によかったよ……! お前も、帰ってきてくれて!』 『遅くなってすまなかったな。けど、もう大丈夫だ!』 そして『彼』は宣言した。 『ウルトラマンゼロ、完全復活だぜッ!!』 バルキー星人は口に手を当ててうろたえる。 『な、なーんてこったいッ! 後ちょっとってところで、ゼロが復活しやがっただとぉ!? なんてアンラッキー!』 だがすぐに思い直してほくそ笑む。 『バーット! 病み上がりならゼロとてそこまで強くはないだろ! やっぱりこのまま、弱っちい時に 串刺しにしてやるぜーッ!』 勢いをつけてゼロに飛びかかる! 剣呑な光を反射するバルキーの剣! しかしその顔面に鉄拳がめり込んだ。 『あだぁぁぁ―――――――!?』 『だぁーれが弱っちいだって? あぁん?』 ポキポキと拳を鳴らすゼロ。バルキー星人は真っ青だ。 そしてバルキー星人はボコボコに殴られ出す。 『お前ッ! よくもッ! 才人を! 殺そうとしてくれたな! 俺が寝てる間に! 卑怯な奴だぜッ!』 『おぐッ! あごッ! ひげッ! ぐぎゃッ! ぬげッ! いぎゃあぁぁッ!』 右腕をグルグルと回し、渾身のストレートパンチ! 『二万年早いんだよぉぉぉぉぉぉぉッ!!』 『うっぎゃぁぁぁぁぁ―――――――――――――!!』 綺麗に放物線を描いてぶっ飛んでいくバルキー星人。しかしこれだけでは倒れはしなかった。 ふらふらと起き上がる。 『ちっくしょぉぉぉぉ……! 今日のところは一旦引き上げだ! 次会う時は海の怪獣を見せてやるッ! リメンバー・ミー!』 全身が光に覆われて消えていくバルキー星人。 『待ちやがれッ!』 追撃を掛けようとしたゼロだが、彼もガクリと倒れかけて足を止めた。その間にバルキー星人は消え去ってしまった。 『くっそ……まだ本調子じゃなかったか……』 『ゼロ!!』 残念そうに頭を振ったゼロの周りに、ウルティメイトフォースゼロの仲間たちが駆けつけた。 『この野郎ぉー! 散々心配かけさせやがってよぉ! 起きるんならもっと早く起きろってんだよ!』 『おっと! グレンファイヤー……』 グレンファイヤーはゼロに飛びついて、その肩に腕を回した。 『これでひと安心だ! 仲間が本当に全員そろったな! ジャンナインも元気でやってるといいが』 『ジャンボット……』 ジャンボットは固くうなずいてみせる。 『見て下さい。彼女たちも、あなたの無事を確認して喜んでくれてますよ』 『ミラーナイト……!』 そしてミラーナイトは、ルイズとシエスタの方に手を差し伸べた。 『ゼロ、サイトはまだ彼女たちとちゃんとした再会をしてません。サイトの元気な姿を見せてあげて下さい』 『おう、分かったぜ! 話はまた後でな!』 ミラーナイト、ジャンボット、グレンファイヤーは一足先に空に飛び上がり、帰還していった。 そしてゼロは変身を解除し、才人の姿へと戻る。 森の真ん中に立った才人に、ゼロはこう呼びかけた。 『才人、先に一つだけ伝えておくことがある。残念な知らせだ』 「何だ? ゼロ」 『無事に今日まで過ごしてたら、本当はお前の命は再生が完了してるはずだった。けど…… ヤプールを倒すのに俺たちの命をギリギリまで光に変換したことで、命がまた損傷した状態に戻っちまった』 それの意味するところは、もう言われなくとも分かる。 『今度は前よりも時間は掛からないだろうが……それでも俺たちの融合を解除できる日にちが延びちまったんだ。 ようやくヤプールを倒せたってのに……。本当にすまねぇ、才人……』 「そっか……」 才人は若干残念そうに苦笑した。地球に帰れなくなったこと、何とも思わない訳ではない。しかし、 「けど、そこまで気にはしないよ。また気長に待つさ」 『ん? 何だか前向きだな。何かいいことがあったのか?』 意識がなくて才人に起こったことを知らないゼロの質問に、才人は笑顔を返した。 「後でゆっくり教えるさ。今は……」 才人はルイズとシエスタがこちらへ走ってくる音を耳にした。そしてそちらへ向かって自分も駆けていく。 「サイトー!」 「サイトさーん!」 ルイズとシエスタの呼び声とともに、懐かしい顔が見えた。才人は目一杯に叫んだ。 「ルイズー! シエスター! ただいまー!!」 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9434.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百四十八話「ウルトラヒーロー勝利の時」 ウルトラダークキラー 悪のウルトラ戦士軍団 登場 本の支配者ダンプリメによって連れさらわれてしまったルイズを救出するため、ダンプリメの 待ち受ける七冊目の世界へと突入した才人とゼロ。しかしダンプリメが繰り出してきたものは、 六冊の本の世界で現れた怪獣たちの怨念を結集させて作り出した恐るべきウルトラダークキラー だった! すさまじい暗黒の力を持つ強敵相手にも果敢に立ち向かっていくゼロだったが、 ウルトラダークキラーは悪のウルトラ戦士軍団を召喚しゼロを追い詰めてしまう。本の世界の 中で孤立無援のゼロは、このまま敗れ去ってしまうのか……。 そう思われたがしかし、ゼロの窮地に現れたのは、ダンプリメに囚われたはずのルイズ であった! 更に彼女に続くようにやってきたのは、本の世界の四つの防衛チーム、そして 本の世界のウルトラ戦士たち! 彼らは物語を完結に導いたゼロを救うために駆けつけて くれたのだった! 今ここに、長い本の世界の旅の、本当の最後の決戦が幕を開く! 「ヘアッ!」 「ダァーッ!」 「ジェアッ!」 「テェェーイッ!」 「トアァーッ!」 「シェアッ!」 ゼロの救援に駆けつけたウルトラ戦士たちが、悪のウルトラ戦士軍団との大乱闘を開始した。 ウルトラマンはカオスロイドUとがっぷり四つを組み、ウルトラセブンとカオスロイドSのアイスラッガー 同士が衝突。ジャックはウルトラランスを手にダークキラージャックのダークプラズマランスと 鍔迫り合いをして、エースがダークキラーエースと組み合ったまま横に倒れ込み、タロウのスワロー キックがカオスロイドTの飛び蹴りと交差、ゾフィーはダークキラーゾフィーとチョップの応酬を 繰り広げている。 「ヂャッ!」 「デヤァッ!」 「デュワッ!」 「ゼアァッ!」 「デェアッ!」 「シュアッ!」 ティガの空中水平チョップとイーヴィルティガの飛び蹴りが交わり、ダイナはゼルガノイドと 熾烈な殴り合いを演じ、ガイアはウルトラマンシャドーの繰り出すメリケンパンチの連発を見切って かわした。コスモス・フューチャーモードはカオスウルトラマンカラミティの拳を受け流し、 ジャスティス・クラッシャーモードの拳打がカオスウルトラマンのキックと激突。マックスは マクシウムソードを片手にダークメフィストのメフィストクローを弾き返した。 十二人のウルトラ戦士が悪のウルトラ戦士と互いに一歩も譲らぬ勝負を展開しているところに、 四つの防衛チームの援護攻撃が行われる。 「ウルトラマンたちを援護するぞ! 他のチーム諸君も協力頼む!」 ムラマツからの呼びかけにシラガネが応答。 「是非もないことです。砲撃用意!」 「一緒に戦えて光栄です、フルハシ参謀!」 「俺の名前はアラシだよ! フルハシって誰だよ!」 シマからの通信にアラシが突っ込みながら、ジェットビートルとウルトラホーク一号から ロケット弾が連射され、カオスロイドとダークキラーたちを狙い撃つ。 「ウオオォォッ!」 ウルトラ戦士と戦っているところに飛んできたロケット弾の炸裂にダメージを負う悪の戦士たち。 カオスロイドUが光線を撃って反撃するも、ビートルはそれを正面から受け止めて飛び続けている。 「俺たちも後れを取るな! コスモスたちを助けるんだ!」 「はい隊長!」 「行くぜショーン! ウィングブレードアタックだ!」 「All right!」 フブキ率いるテックライガー編隊と、コバとショーンのダッシュバード1号2号も攻撃開始。 ライガーのビーム砲がカオスウルトラマンたちとイーヴィルティガ、ゼルガノイドを撃ち、 ダッシュバードのウィングブレードアタックがシャドーとダークメフィストの脇腹を斬りつけた。 「シェアァァッ!」 防衛チームの援護攻撃によって悪の戦士たちが牽制されると、ウルトラ戦士たちの一撃が 均衡を崩す。ウルトラ戦士の強烈なウルトラキックが悪の戦士たちを纏めて薙ぎ倒す! そして助けに来てくれた彼らの奮闘は、ゼロのエネルギーだけではなく気力も通常以上に 回復させたのだった。 『俺たちが旅で出会った人たちが、俺たちを助けてくれてる! こんなに勇気づけられる ことはないぜ!』 『ああ! 俺たちもまだまだ負けてられねぇぜッ!』 ゼロはウルトラ念力で弾かれたゼロツインソードDSを手元に戻すと、再びウルトラダーク キラーに猛然と斬りかかっていく。 『おぉぉぉらッ!』 ダークキラーは腕のスラッガーで防御するが、ゼロはそのままダークキラーを突き飛ばして 姿勢を崩させた。先ほどまではダークキラーのパワーの方が上回っていたが、その関係は気が つけば反転していた。 デルフリンガーがゼロと才人に告げる。 『すげえぜ相棒たち! すんげえ心の震えだ! この震えがお前さんたちの力になってる! 力が湧き上がって止まらねえ……こいつぁ俄然面白くなってきたぜぇ!』 ゼロも仲間のウルトラ戦士たちの奮闘ぶりに背中を押されるように、ウルトラダークキラーを 少しずつ押し込んでいく。その様子を見上げながら、ダンプリメは依然狼狽していた。 「こんな……こんなことはあり得ない! 別の本の登場人物が、異なる本の世界に入り込んで くるなんて! 一体何がどうすれば、そんなことが起こると言うんだ!?」 立ち尽くして混乱ぶりを言葉に示すダンプリメに、ルイズが肩をすくめた。 「本のことなら何でも知ってるとか豪語した割には、そんな簡単なことも分からないんじゃ ないの。呆れたものね」 「何!? ……まさか、ルイズがッ!?」 ダンプリメは一つの可能性に行き着いてルイズにバッと振り向いた。ルイズは得意げにほくそ笑む。 「そう、わたしが連れてきた訳よ! まぁ正確には、これまでの記憶を頼りにそれぞれの物語の 本へ助けを呼びかけたら、応じた彼らがわたしの元に来てくれたんだけど」 「何だって! そんなことが……。いや、そもそもルイズ、君がどうしてここにいるんだ! 何故サイトのことを覚えてる!? 記憶は念入りに封印したはずなのに……!」 そのダンプリメの疑問にも、ルイズは自信満々に返した。 「聞こえたのよ! この世界で、サイトのわたしを呼ぶ声が! 気持ちが! それが心に 伝わったから、わたしは全てを思い出したの!」 「気持ちが……!?」 ハッと気がつくダンプリメ。 「そうか……! 本の世界はいわば『想い』の世界。現実の世界よりも、精神と精神のつながりが 強くなる。それでそんな現象が……! ルイズを本の世界に連れ込んだのは失敗だったのか……!」 ルイズは堂々とした態度で、ダンプリメにまっすぐ伸ばした人差し指を向けた。 「あなたがわたしのサイトの記憶を封印したのは、サイトからわたしを奪い取るだけじゃなく、 わたしとサイトの絆を恐れたからでしょう! それがあると、自分が勝てる自信がないから!」 「うッ……!?」 「だけど残念だったわね。どんなに知識豊富でも、現実での体験を持たないあなたでは、 わたしたちの現実の世界で育んできた絆を消し去ることは初めから不可能だったのよ!」 ルイズが堂々と言い切っている中で、ウルトラ戦士たちと悪のウルトラ戦士軍団の決着の時が 迎えられようとしていた。 「ヘアァァァッ!」 ウルトラマンのスペシウム光線とカオスロイドUのカオススペシウム光線、セブンのワイド ショットとカオスロイドSのカオスワイドショット、ジャックのスペシウム光線とダークキラー ジャックのキラープラズマスペシウム、エースのメタリウム光線とキラープラズマメタリウム、 ゾフィーのM87光線とダークキラーゾフィーのキラープラズマM87ショット、ティガのゼペリオン 光線とイーヴィルティガのイーヴィルショット、ダイナのソルジェント光線とゼルガノイドの ソルジェント光線、ガイアのクァンタムストリームとシャドーのシャドリウム光線、コスモスの コスモストライクとカオスウルトラマンカラミティのカラミュームショット、ジャスティスの ダグリューム光線とカオスウルトラマンのダーキングショット、マックスのマクシウムカノンと ダークメフィストのダークレイ・シュトロームが真正面からぶつかり合う! 両陣営互角の光線の ぶつかり合いは激しいエネルギーの奔流を生み出し、それが天高く飛び上がっていく。 そのエネルギーは、わずかに上回った光の戦士たちの力に押されて悪のウルトラ戦士軍団へと 降りかかった! 「ウワアアアアアァァァァァァァァァァァァァッ!!」 十二人の悪の戦士たちは爆発的なエネルギーによって一網打尽。ガラスのように砕け散った 空間とともに消滅していき、完全に無に還っていった。 「やったわッ!」 ぐっと手を握って喜びを示すルイズ。悪のウルトラ戦士軍団に打ち勝った光の戦士たちは ゼロの元へ駆けつけ、ともにウルトラダークキラーと対峙した。 いくらダークキラーが絶大な闇の力を有していようとも、これだけの数の勇者たちを相手にして 勝機などあるはずがない。ゼロがダンプリメに投降を勧告する。 『ダンプリメ、これ以上の戦いは無意味だ! 大人しく身を引きな! お前がどんなに本の 世界を自由に出来ようと、どんなに闇の力を集めようとも、ここにある心の光を屈させることは 出来ねぇんだ! それを学べただけでも儲けもんだろ!』 ダンプリメはしばし無言のまま、何も答えずにいたが……やがて長く長く息を吐いた。 「そうみたいだね……。残念だけど、僕の負けだ。ルイズのことはあきらめる他はないね……」 降伏を受け入れたダンプリメであったが……彼にとっても予想外のことがすぐに起こった。 『そうはいかぬ……!』 それまでうなり声を発するばかりであったウルトラダークキラーが、唐突に口を利いたのだ! 「えッ!?」 しかも自らの生みの親であるダンプリメに手を伸ばし、その身体を鷲掴みにして捕らえたのだ! 肉体への配慮もないほどの強い力で締められ、ダンプリメは苦悶の表情を作る。 『何ッ!』 ダークキラーの行動の変化に驚くゼロたち。ダンプリメはダークキラーを見上げて問う。 「ウルトラダークキラー、何のつもりだ……!? ぼ、僕は君を作ったんだぞ……!?」 するとダークキラーは、次のように言い放った。 『この身体に渦巻く恨みを晴らすまで、戦いをやめることは許されぬ……! 貴様にも つき合ってもらうぞ……!』 「何だって……!? ボクの制御が、効いていない……!?」 ここに来てゼロたちは察した。ウルトラダークキラーは溜め込んだ怨念が多すぎたため、 ダンプリメの制御を離れて独り歩きを始めてしまったのだ! 『だから言っただろうが……!』 『仕方ねぇな……。今助けてやっから、変に暴れるなよ!』 才人が吐き捨て、ゼロがダンプリメを救出しようとツインソードを構える。しかし、それを制して ダークキラーが警告した。 『我とこの者の肉体はリンクしている……。いや、最早我がこの者を支配している! 我を殺せば、 この者もまた消滅することになるぞ……!』 『何ッ! くッ、闇の力ってのは陰険なことしやがるもんだな……!』 散々迷惑を掛けられたとはいえ、戦う意志を放棄した者を死なせてしまうのは目覚めが悪い。 ゼロが戸惑うと、ダンプリメが自嘲するように笑いながら呼びかけた。 「いいさ、やってくれ……」 『!』 「これぞ自業自得という奴だよ……。こんなことになってしまうなんて、我ながら馬鹿なことを したものだ……。どうせボクは本の中にしか居場所がない異端。せめて一人でも側にいる人が 欲しかったけれど……やはり、本の中の人間なんていない方がいいんだろう。ひと思いに バッサリとやってくれ……」 すっかりと己の死を受け入れたダンプリメ。その言葉に、ゼロは大きく肩をすくめた。 『ますますしょうがねぇ奴だなぁ。そんなこと聞かされたら……』 ゼロに同意する才人。 『ああ。ますます死なせる訳にはいかなくなったぜ!』 「!? だけど、ボクを犠牲にしないことには……!」 才人たちの言葉に動揺を浮かべたダンプリメに、ルイズが自慢げに告げた。 「安心しなさい、ダンプリメ。ウルトラマンゼロは、命を護る時にはいつだって奇跡を 起こすんだから! そうでしょ?」 『ああ、その通りだッ! おおおおおッ!』 気合いの雄叫びとともに、ゼロの身体が赤と青に激しく光り輝き出した! 『ぬおぉッ!?』 思わず腕で顔を覆うダークキラー。ゼロの輝きは空間をもねじ曲げ、何もない空に影を 映し出す。 そして閃光の中から現れたのは……! 『教えてやるぜダンプリメ! 強さと、優しさって奴をッ!』 ストロングコロナゼロとルナミラクルゼロ……二つの形態が、同時にこの場に現れていた! ゼロが二人に増えているのだ! 「嘘……!?」 『馬鹿なッ!? どういうことだ……! どうしてそんなことが出来るのだぁぁぁッ!!』 ゼロの起こした奇跡に冷静さを失ったダークキラーは、正面から二人のゼロに飛び掛かっていく。が、 『でやぁッ!』 『ぐおぉッ!?』 ストロングコロナゼロの鉄拳が返り討ち。そしてルナミラクルゼロが手中のダンプリメを 救出し、彼らの後ろに降ろした。 ストロングコロナゼロはよろめいたダークキラーに対して灼熱の攻撃を用意。ルナミラクル ゼロはダンプリメへ光の照射の準備をした。 『受けてみな! これが優しさと……!』 『真の強さだぁぁぁぁぁぁッ!!』 ストロングコロナゼロの放ったガルネイトバスターがウルトラダークキラーを押し上げ 天空に叩きつける! 更にウルトラマン、セブン、ジャック、エース、タロウ、ゾフィー、 ティガ、ダイナ、ジャスティス、マックスの必殺光線もダークキラーに押し寄せられる! 一方でルナミラクルゼロとガイア、コスモスが光の粒子をダンプリメに浴びせる。 『ぐおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!』 「……これは……?」 怒濤の必殺光線の集中にウルトラダークキラーの全身が焼かれる。しかしダンプリメの 身体に変化はない。浄化の光によって闇の力を清められ、ダークキラーの呪いが解かれているのだ。 『こ、これが……光……!!』 ウルトラダークキラーは戦士たちの光に呑まれ、完全に消滅。そしてダンプリメは生存し、 ぼんやりとウルトラ戦士たちを見上げた。ルイズはゼロたちの完全勝利に、当然とばかりに 重々しくうなずいた。 ゼロと才人は、自分たちを別の本からはるばる助けてくれたウルトラ戦士たち、防衛チームに 礼を告げる。 『みんな、本当にありがとう。お陰で勝つことが出来た』 『俺たち、今までの旅のこと、あなたたちと出会ったこと、ずっと忘れないから! いつかまた、 みんなの本を読んであなたたちの世界に触れるよ!』 二人の言葉にウルトラマンたちは満足げにうなずき、天高く飛び上がってそれぞれの世界に 帰っていく。防衛チームもゼロたちに敬礼した後、ウルトラ戦士たちの後について帰還していった。 『ありがとーう! さよーならー!』 大きく手を振って見送るゼロ。そうしてルイズが笑顔でゼロと才人に呼びかける。 「さぁ、わたしたちも帰りましょう! みんなが待つ、わたしたちの世界に!」 『ああ!』 ダンプリメはゼロたちの様子、ルイズの輝くような笑顔の横顔を見つめ、ふぅとため息を吐いた。 「はは……これは敵わないなぁ……」 自嘲するダンプリメだったが、その表情にはどこか満ち足りたものがあった……。 こうして、図書館に誕生した本の中の生命体から端を発する、現実の世界では知っている者が ほとんどいない大バトルの旅は無事に終わりを迎えた。才人とルイズが五体無事に現実世界に 帰ってくると、シエスタたちは嬉し涙とともに激烈に迎えてくれたのだった。 リーヴルは事件終結後、経緯はどうあれ異形の存在にそそのかされ、手先としてラ・ヴァリエール 公爵家息女のルイズに危害を加えたとして、王立図書館司書の座の辞任をアンリエッタに申し出た。 ……しかし、アンリエッタはそれを却下した。 彼女の下した裁きはこうだ。ダンプリメは外の世界のことを、善悪の判断をよく知らない 子供のようなものだ。それをしつけ、正しき方向に導く役割の人間が必要だと。それは図書館の ことを誰よりも知っているリーヴル以外の適任はいないとして、彼女にダンプリメの世話役を 厳命したのであった。どんな形であれ、リーヴルが元のまま図書館にいられることに才人たちは 安堵したのだった。 そして肝心のダンプリメは、すっかりと心を入れ替えた。もう誰かを本の世界に引きずり込む ような真似はきっぱりとやめ、代わりに光の力の研究にバリバリと精を出すようになったという。 ゼロたちの戦いぶりにそれほど影響されたのだろうか……。もしかしたら、いつの日かダンプリメが ウルトラ戦士になる力を得る日が来るかもしれないが、それはまた別の話なのであった。 そして才人とルイズは、先に帰ったシエスタたちに後れる形で、魔法学院へと帰還していた。 「おぉー、遂に学院に帰ってきたなぁ! 何だか久しぶりに感じるぜ。時間にしたら、ほんの 一週間ぐらいしか離れてないはずだけど」 あまりにも密度の濃い旅だったので、才人が懐かしさまで覚えてしみじみとつぶやいた。 しかしそこにルイズが告げる。 「だけど、またすぐに離れなくちゃいけないみたいよ。姫さまからのお達しがあったの」 懐から、アンリエッタからの密書を指でつまみ出すルイズ。 「今度はロマリアに行かなくちゃいけないみたい。国際世情もまた不穏になってきてるそうだし、 今度も長くなるかもね」 と言うと、才人がうんざりしたかのように長い息を吐いた。 「マジかよぉ……。あっち行ったりこっち行ったりはもうお腹いっぱいなのに」 「何言ってるのよ。図書館から一歩も出てなかったんでしょ?」 「いやぁそう言うならそうだけど、そういう意味じゃなくてだな……」 言い返そうとした才人だったが、すぐ苦笑いして肩をすくめた。 「まぁいいか。そんなことぶつくさ言っててもしょうがないもんな。今度もいっちょ頑張りますか!」 「ええ、その意気よ。なかなか分かってきたじゃない」 顔を上げたルイズは才人と目が合い、思わずクスッと笑い合った。 「これからもよろしくね。この世界のヒーローにして……わたしの使い魔」 「お安い御用だよ。伝説の担い手の、俺のご主人様」 おかしそうに笑うルイズの表情には、とても満ち足りたものがありありと浮かんでいたのであった。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9091.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第二十七話「狙われた少女」 赤色火焔怪獣バニラ 青色発泡怪獣アボラス 溶岩怪獣グランゴン 冷凍怪獣ラゴラス サーベル暴君マグマ星人 登場 「きゃああああああッ!」 「うわああああああああぁぁぁぁぁぁ!」 トリステイン首都、トリスタニア。今この街は、必死に逃げ惑う人々の悲鳴が喧騒を作り上げ、 混乱の真っ只中にあった。 「ミィ――――――――イ!」 人々が逃げ惑っている原因を作っているのが、今街を蹂躙している赤い怪獣。口から火を吹いて、 トリスタニアの家々を焼き払っている。 この怪獣の名前はバニラ。三億五千年前の地球の超古代文明に「赤い悪魔」と呼ばれ、 封印された大怪獣である。別個体が1966年の日本に復活し、科学特捜隊と大激闘を繰り広げた。 「ゲエエゴオオオオオオウ!」 そのバニラの正面には、別の青い怪獣が同じように街を踏み潰し、口から吐き出す溶解液で ドロドロに溶かしながら侵攻をしていた。 こちらの怪獣の名はアボラス。バニラと同じ時代に生きて、古代人から「青い悪魔」と 恐れられた怪獣で、バニラと同じく液体の状態でカプセルの中に封印された。非常に獰猛で、 バニラとは宿敵の関係にある。 二体の怪獣に蹂躙されるトリスタニア。しかし怪獣はまだいた。 「ギャアアアアアアアア! グガアアアア!」 「キィィィィッ!」 バニラとアボラスの左右からは、それぞれ四つ足の背中に赤いコアを持った怪獣と、アボラスのように 青い体表の怪獣が家々を蹂躙している。 前者の名前はグランゴン、後者はラゴラス。互いに対の関係になる地底怪獣と深海怪獣であり、 バニラとアボラスのように、この二体も争い合う間柄にある。 現在トリスタニアは、四体もの怪獣の攻撃を受けていた。怪獣たちの猛威により、城下町は 地獄絵図の様相になっている。 「ミィ――――――――イ!」 「ゲエエゴオオオオオオウ!」 「ギャアアアアアアアア!」 「キィィィィッ!」 四体の怪獣は十字を狭めていくように四方向から近づき合い、同時に激突した。怪獣たちの 四つ巴の戦いが始まる。 「ゲエエゴオオオオオオウ!」 「ミィ――――――――イ!」 「キィィィィッ!」 「ギャアアアアアアアア!」 アボラスがバニラの腕に噛みつき、バニラはラゴラスへ火炎を吹きつけ、ラゴラスはグランゴンの 側面を蹴り、グランゴンがアボラスの脚に食らいついた。四体の怪獣は揉み合いながら混戦を繰り広げる。 だが、その混戦に巻き込まれるトリスタニアの人々はたまったものではない。怪獣たちの もつれ合いながらの攻撃の余波で街が破壊されていき、大勢の市民は逃げ場を失っていく。 今も大勢の人たちが瓦礫と火の手に囲まれて悲鳴を上げる。 「ぎゃあああああああああああッ!!」 「ひいいいぃぃぃぃぃぃ!」 「だ、誰か助けてぇぇぇぇぇ!」 トリステイン軍の騎士たちが出動して空から怪獣へ攻撃を仕掛けるが、怪獣たちは何食わぬ顔で 戦いを続ける。自分たちの介入は蚊ほどにも効いていないようで見向きもされないことに、騎士たちは 誇りを傷つけられて歯ぎしりした。 トリスタニアを地獄に塗り替えていく怪獣たちの暴挙を止める者は、誰もいないのか? いや、それは違う。見よ! 今、空の彼方から赤い光の玉が超高速で怪獣たちの下へと飛来してきた! 「ミィ――――――――イ!」 「ゲエエゴオオオオオオウ!」 「ギャアアアアアアアア!」 「キィィィィッ!」 赤い光球は怪獣たちの間に割り込むと、弾けた際の衝撃で、四体の巨体を大きく吹き飛ばし、 城下町の外へ別々の方向に追い出した。怪獣たちはもんどりうって、野原の上に転倒した。 「デュワッ!」 光球の弾けた後には、青と赤の巨人が仁王立ちしていた。別宇宙から迷い込んで、ハルケギニアを 蹂躙する怪獣の脅威から、この地の人間たちを護るためにはるか遠くの世界からやってきた光の戦士、 ウルトラマンゼロだ! 「あぁッ! ウルトラマンゼロが来てくれたぞ!」 「これでもう大丈夫ね! 怪獣をやっつけて!」 「頑張れー! ゼロー!」 トリスタニアの住人たちは、恐慌から一転、安堵してゼロを応援し始めた。彼らは、ゼロが どこから来た誰なのかを知らない。けれども、怪獣に立ち向かって自分たちの命を救ってくれる 彼をすっかり受け入れ、新しい守り神と崇めていた。 「ミィ――――――――イ!」 「ゲエエゴオオオオオオウ!」 一方、いきなり吹っ飛ばされた怪獣たちは一斉に起き上がって怒りの咆哮を上げる。たとえゼロでも、 一度に四体の怪獣から街を守るのは無理があるだろう。どんなに強くとも、身体は一つだ。 だが、ゼロは一人きりではない。ともに戦ってくれる仲間がいる。 『はぁッ!』 『ジャンファイト!』 『よっしゃぁ! 出番だぜぇッ!』 教会のステンドグラスのきらめきから銀と緑色の巨人が飛び出し、上空から飛来した戦闘機が ロボット戦士に変形。街の一画からは、赤い炎の戦士が回転しながら巨大化した。 「ミラーナイト、ジャンボット、グレンファイヤーも来てくれたぞぉ!」 三人は、ゼロと肩を並べて戦う勇敢な戦士たち。鏡の騎士ミラーナイトと、鋼鉄の武人ジャンボット、 そして炎の戦士グレンファイヤー。彼らとゼロを合わせた四人は「ウルティメイトフォースゼロ」と 呼ばれる、新宇宙警備隊なのだ。 ゼロたちは城下町から跳び出すと、ジャンボットがグランゴン、ミラーナイトがラゴラス、 グレンファイヤーがバニラ、そしてゼロがアボラスとそれぞれ対峙した。ウルティメイトフォースゼロと 怪獣軍団の決闘が始まる。 「ギャアアアアアアアア! グガアアアア!」 グランゴンは口から火炎弾を、真正面のジャンボットへ発射する。グランゴンの背には 高熱を作り出すマグマコアがあり、そこから生成された火炎弾の威力はかなりのもの。 ジャンボットの鋼鉄のボディでも危ないかもしれない。 だがジャンボットは頭部からせり上がった銃口からビームエメラルドを照射。火炎弾を貫通し、 グランゴンを撃ち抜く。 「ギャアアアアアアアア!」 ビームエメラルドに撃たれてたじろぐグランゴン。その隙を突いて、ジャンボットはどんどん攻勢を掛ける。 『ジャンミサイル!』 「グガアアアア!」 背部から大量のミサイルを飛ばし、グランゴンに降り注がせた。グランゴンは爆発の連続に 晒され、立ち往生する。 『バトルアックス!』 そしてジャンボットは左肩のシールドを戦斧に変形させると、それを手に回転。遠心力をつけた 斧の振り下ろしを、グランゴンに叩きつける。 『必殺! 風車ッ!』 マグマコアに斧の刃が深々と突き刺さり、グランゴンは一瞬の内に木端微塵になった。 「キィィィィッ!」 ラゴラスはミラーナイトに冷凍光線を吐いた。ラゴラスの冷凍光線の温度はマイナス240度。 どんなものでもたちまち凍らせてしまう威力がある。 『はッ!』 しかしミラーナイトがディフェンスミラーを張ると、冷凍光線は折れ曲がってラゴラスに戻っていった。 どんな威力があろうと光線である以上、鏡を凍らすことは出来ないようだ。 「キィィィィッ!」 光線を放ったラゴラスの腹部が凍りつく結果となる。しかしさすがは冷凍怪獣、低温には 耐性があるのか、ひるむことなくミラーナイトへ突進していく。 ラゴラスの突進がミラーナイトに決まった。……かと思われたその瞬間に、ミラーナイトの 姿が砕け散った。 「キィィィィッ!?」 『こっちですよ』 砕け散ったはずのミラーナイトが、いつの間にかラゴラスの背後にいた。鏡を使ったトリックだったのだ。 『シルバークロス!』 ミラーナイトが水平に切った両腕から十字の光刃が飛び、ラゴラスの身体を貫通して爆散させた。 「ミィ――――――――イ!」 『おっとッ!』 バニラがグレンファイヤーに高熱火炎を吹きつける。グレンファイヤーはそれを交差した腕で 受け止めた。バニラの火炎もグランゴンに劣らないほどの熱量だが、グレンファイヤーは 平然としている。炎の巨人は、高熱攻撃に耐性があるのだ。 『なかなかの炎を吐くじゃねぇか! けど、俺の炎の方がもっと熱いぜぇッ!』 炎を受け切ったグレンファイヤーは、胸のファイヤーコアを燃えたぎらせると、バニラへと 全力ダッシュする。 『ファイヤァァァァ――――――――――――!!』 「ミィ――――――――イ!」 姿勢を低くしてバニラの腹部に抱きついたグレンファイヤーは、その状態のまま大空へ 勢いよく飛び上がる。 『うらあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』 「ミィ――――――――イ!」 グレンファイヤーに運ばれて地上から離れていくバニラに、グレンファイヤーの纏う炎に 熱せられてどんどん赤熱していく。そして臨界点に達すると、はるか上空で大爆発を起こし、 ハルケギニアの塵となった。 「ゲエエゴオオオオオオウ!」 『うおッ!』 アボラスがゼロに溶解泡を吐きつけた。鉄骨をもドロドロに溶かす非常に強力な泡にゼロの 全身が包まれた。 『せいッ!』 だがゼロが気合いを入れると、こびりついた泡が全部弾き飛ばされた。アボラスの攻撃を はね返したゼロだったが、それだけで結構なエネルギーを消耗したので、カラータイマーが 点滅を始めた。 『思ったよりもやるな。けど、本当の戦いはここからだぜッ! でやぁッ!』 「ゲエエゴオオオオオオウ!」 ゼロは瞬く間にアボラスの懐に飛び込むと、鋭い横拳を入れた。拳の一撃を食らったアボラスが 後ろに下がると、反撃に溶解泡を吐く。 『おっと! せやッ!』 横に跳んで溶解泡をかわしたゼロのビームランプからエメリウムスラッシュが飛んだ。 直撃を受けるアボラスだが、動じずに溶解泡をまた吐く。 「ジュワッ!」 再びかわしたゼロは、今度はワイドゼロショットを撃ち込んだ。だが必殺光線を食らっても、 アボラスは倒れずに攻撃を続ける。 アボラスは、科学特捜隊が武器の底が尽きるまで攻撃しても、まるで平然としていたほどに 耐久力と生命力が強い怪獣だ。その異常なタフネスが真の武器と言っても良く、超古代文明の人間も、 どれだけ手を尽くしてもバニラとアボラスがどうやっても死ななかったために封印という手段を 選んだのではないかと推測されている。 『これも耐えるとはな! だがこれで……フィニッシュだぜぇぇぇッ!!』 しかしゼロも負けない。ゼロスラッガーをカラータイマーに取りつけると、腕を広げて、 とっておきの必殺技、ゼロツインシュートを放った! 「ゲエエゴオオオオオオウ!」 すさまじい光線の奔流を食らったアボラスは、それでもしばらく耐えていたが、遂に耐久の 限界が来て、粉々に吹き飛んだ。 「やった! ウルティメイトフォースゼロの勝利だ!」 「ありがとーう、ウルティメイトフォースゼロー!」 怪獣が全て倒されると、トリスタニアの人たちが万感の思いを込めて、ゼロの下に集まった 戦士たちに手を振った。 一人一人が超一流の戦士のチーム、それがウルティメイトフォースゼロ。如何なる大怪獣も、 彼らの前では形無しだ。今日もハルケギニアを襲う脅威を取り払うため、それ行け! ぼくらのヒーローたち! 「……」 「……もしもし、ルイズさん。ちょっとお聞きしたいんですけど?」 怪獣四体とウルティメイトフォースゼロの戦いの後、トリスタニアから魔法学院を繋ぐ街道を、 ルイズと才人の二人が馬で進んでいた。二人とも、魔法学院に帰る最中だ。 その中で、才人がルイズに呼びかける。ルイズは、何故か不機嫌そうな固い表情をしている。 「……言ってごらんなさい」 「確か今朝は、『休日に街に出て買い物するのって、久しぶりー!』……とか言ってませんでしたっけ。 結構、楽しそうだった覚えがあるんですが。……まぁ、怪獣が出現したから途中で中止になっちゃったけどさ。 でも、怪獣を倒したらお前も嬉しそうにしてたじゃん」 おずおずと話す才人に、ルイズはつっけんどんな態度で返す。 「そんなこともあったかしらね」 「いやいやいや、気になるだろうが! 何だって今はそんなに不機嫌なんだ?」 と尋ねかけると、ルイズはますます眉間に寄せた皺を深くした。 「そりゃあ、あんたは楽しかったでしょうね。救助活動にかこつけて、そこらじゅうの女の子に デレデレしちゃって……。もう、みっともないったらありゃしない!」 才人は戦闘後、破壊された街で逃げ遅れた人たちの救援を手伝っていたのだが、それで 助けた女性たちに囲まれて感謝の言葉を寄せられた。それがルイズには気に食わないようなのだった。 才人はそれに反論する。 「デレデレなんてしてねーよ。不謹慎だな。……って、もしかしてヤキモチか?」 ひと言言うと、ルイズは思い切り慌てふためいた。 「そ、そ、そ、そんなわけないでしょうが! バカ使い魔が迷惑をかけたら、ご主人様が 迷惑するからよ! 別にヤキモチやいてるわけじゃないわよ!」 「そうかよ!」 「そうよ!」 喧嘩腰になる二人のやり取りを端で聞いているゼロとデルフリンガーが言葉を交わす。 『この二人は相変わらずだな。なぁデルフ』 「全くだ。仲良しすぎて、俺っちの入る隙間がねぇ」 「別に、仲良しすぎなんかじゃないわよ!」 ルイズがほんのり顔を赤らめて声を荒げた。それでデルフリンガーは愉快そうに笑う。 「まあいいじゃねえか。魔法使いと使い魔ってのはなぁ、唯一無二のパートナーなんだからよ。 仲良いのはいいことなんだぜ。どうせだったら、もっとイチャイチャしたって……」 「それ以上減らず口叩いたら、溶かして屑鉄にして学院の裏庭に埋めるからね!」 からかうと、ルイズが激昂して脅した。 「おおっ、怖ッ! 相棒、俺っちまた一休みしておくから、出番が来たら呼んでくれよな!」 あくまでおどけるデルフリンガーは、それ以上言葉を発しなくなった。 「やれやれ……」 デルフリンガーにいいように遊ばれるルイズに肩をすくめる才人。 その時、彼の目に、進行方向の道の端に、人が倒れているのが映った。 (ん……? 誰か、倒れてる) 「ちょっと、サイト? どうしたの?」 「あそこ……。あの木のふもとに誰か倒れてないか?」 「え? どこ?」 「ほら、あそこ……って、行ってみた方が早いな。ごめん、ルイズ。先に行くぞ!」 言うが早いか、才人は馬を急かして、ルイズを置いて走っていった。 「あ、ちょっと、サイト! もうっ、何なのよー」 ルイズが慌ててその背を追い掛けていった。 ひと足早く到着した才人は、馬から降りて木陰に倒れている人物に近寄っていく。未成年の、 黒髪の少女だ。 「やっぱりだ……。人が倒れてる……。大丈夫かな……って、え、おい!?」 その姿を観察する才人は、一番に服装に目を留めて、言葉を失った。ゼロも、同じく少女の格好に驚く。 「もう、サイト! ご主人様を置いて何してるのよ! って、本当に人が倒れてる……」 追いついたルイズも少女に目をやると、首を傾げた。 「この娘、見慣れない格好をしてるけど、一体、どこの国の人かしら」 その疑問に、ゼロがこう答えた。 『ルイズ、お前が答えにたどり着くのは無理だぜ』 「それってどういう意味? ……まさか!」 『察しがいいな……。その通りだ。この娘の着てるのは、地球の服だ!』 「サイトの故郷の!?」 少女の服装は、明らかにハルケギニアの文明にない素材で出来ている。それだけではない。 才人はその格好に、非常に見覚えがあった。 (この娘が着てるブレザー、俺の通ってた学校の制服だ……!) そして顔をよく確かめると、衝撃の事実に気づいた。 (ま、間違いない。クラスの委員長だった「高凪春奈」さんだ!) いるはずのない人物が目の前で倒れていることにショックを受ける才人。 (何で高凪さんがこの世界に来てるんだ? もしかして、俺みたいに誰かに召喚されたのか?) 「ちょっとサイト。何、この娘をじーっと見てるのよ。もしかして、見覚えがあるの?」 「あ、ええっとそれは……と、とりあえず介抱しようぜ」 混乱気味の才人は上手い説明が頭に思い浮かばず、先に少女、春奈を診ることにした。 だがそれをルイズに止められる。 「ちょっと、相手は女の子よ。男のあんたがベタベタ触るもんじゃないわ。わたしが診るから、 そこどいて」 多少の嫉妬心も含めて才人をどかすと、ルイズは春奈の側にしゃがんで診断する。 「意識を失ってるだけのようね。頭に損傷はないみたい……。サイト、急いで学院に向かって!」 「へッ?」 「へッ? じゃないわよ。わたしたちは馬なんだから、倒れてる人を連れていけるわけないでしょ? 応援を呼んでって意味よ」 「あ、ああ……。そうだな」 才人がルイズの指示通りに、学院へと向かおうとした時、道の端の林の中から、何者かの 人影が飛び出してきた。 『おっと、そうは行かねぇぜ! その娘をこっちに渡してもらおうか!』 「!?」 現れたのは、首から下が黒ずくめで顔に口を出したマスクを張りつけたかのような容貌を している怪人だった。胸元にはアンクレットにエジプト十字に似た紋様を飾っていて、 腰には鋼鉄製のパンツを穿いている。 怪人の姿を目の当たりにしたルイズが叫んだ。 「きゃあッ!? へ、変態よ!」 『だぁれが変態だ! 下等な原住民が!』 たちまち激怒した怪人へ、才人が問いかける。 「お前、まさか、マグマ星人か!」 『如何にも! 俺様は宇宙の支配者、マグマ星人だぁ!』 肯定する怪人。マグマ星人とは、M78スペースで強豪宇宙人に名前を連ねる種族の一つで、 幾多もの星を滅ぼした凶悪な侵略者である。あのウルトラマンレオの故郷のL77星を滅ぼしたことで 有名で、才人も端末の怪獣図鑑に頼らなくても名前がすぐに出てくるほどだった。 『しかし、俺様の名前を知ってるってことは、お前はウルトラマンゼロの変身者だな! こんな場所で 出会うとは!』 才人の正体を察したマグマ星人は、すぐに右手にサーベルを装着して突きつけた。才人は ルイズと春奈を背にかばいつつ問い詰める。 「この娘に何の用だ! まさか、お前がこの娘をこっちの世界に連れてきたのか!?」 『ふッ。貴様がそれを知る必要はない。今の俺様の目的はその娘だ。大人しく差し出すと言うなら、 見逃してやるぞ』 サーベルで脅しを掛けるマグマ星人。当然、才人がそれを呑む訳がない。 「ふざけるな! お前みたいな奴にこの娘を渡せるか! そっちこそ今すぐ立ち去れ!」 「へへへッ、俺っちの出番だな、相棒。ウチュウ人相手ってのも悪かねえや」 才人がデルフリンガーを引き抜くと、デルフリンガーが嬉々として言った。 『ゼロに変身しないで、このマグマ星人様と戦うつもりか! 愚かな! 地球人如き、俺様の 敵ではないわぁ!』 マグマ星人も退かずに、サーベルを振りかざして飛び掛かろうとする。 「来るぜ、相棒! ガンダールヴの力、見せつけてやりな!」 「おうッ! ルイズはその娘を守っててくれ!」 ルイズに春奈を任せると、才人は前に出てマグマ星人と刃を交わした。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5399.html
前ページ次ページゼロの使い魔人 「キ? 何それ。精神力ならともかく、そんなの聞いた事ないわ」 「解釈は諸説あるが、解り易く言えば人間の生きている力そのものさ。人だけじゃない。鳥や獣、樹や草、ひいては土、水、風、火とか世界に在る物全てに遍く宿っていて、その存在を成り立たせている万物の根源ともいえる物……、って思想が俺の国を含めた周囲の地域には在る。断じて、魔法やその副産物なんぞじゃ無い」 「信じられないわよ。今だって、そんなのまるでわかんないもん」 と、眉を顰めて龍麻を見やるルイズの口調と視線に態度は、前日にも増して棘を含んで、もはや敵意と称しうる段階にあり、その余りの空気の悪さに内心辟易しつつ、龍麻は肩を竦めてみせる。 「当たり前すぎて自覚出来ないというか、本来は目に見えて影響を及ぼす程強くないんだよ。 あんた等魔術師が魔術を使う際に必要な精神力とかだって、それを使える奴や当人はその流れを知覚できても、心得の無い他人に形有る物として渡したり、手に触れさせたりして実感させられないだろ」 「それに、インヨーと、木・火・土・金・水だっけ? 変な系統の分け方よね。わたし達が使ってる、火・土・風・水・虚無とはどう違うのよ?」 「一口に言える様な物では無いんだけどな……。只、あんたが言った虚無ってのを除く四つに属性を振り分けるって考え自体は、俺の暮らしてた所から離れた別の地域に酷似した物が伝わってる。 まあ、どっちが正しいとも言えないし、より優れてるって訳でもないんだがな」 「それで、そのキとやらを使ってゴーレムを燃やしたり、吹き飛ばしたとして他に何が出来るのよ、あんたは?」 「俺のはそういう形で顕われたが、氣の 力 は人によって強弱や発現、作用の仕方に差異は有っても、その本質は同じだ。そして偶々、それが『在る』事に気付いたとしても、ただそれだけだ。存在が必要とされる事は無いし、他人から褒めそやされ、崇め奉られもしない。……その逆は有るけどな」 自身の宿星…『黄龍の器』の本質については一言も触れず、龍麻は答える。 「兎に角…低い確率できっかけも生い立ちもバラバラだが、そういう妙な 力 に覚醒ざめる奴が俺の周りには何人も居たんだな。 例を挙げるなら、異常に運が良くなったり、雷や風、火に水の流れや勢いを操ったり、歌に自分の望む効果を宿らせるとか、一時的に亡くなった人の心の一部を自分の裡に呼び込むとか、身体の怪我や異常を癒したりと千差万別だな。 で、そんな妙な 力 を持った連中が、他人の迷惑顧みず好き勝手やって引き起こす、異常事態やら騒動を大事になる前に収めるのが、俺や俺の昔の仲間がやってた事の一つだな」 「……相変わらずホラ話っぽくて怪しいけど、そういうのに較べたらあんたのはあんまり使えないわねー。ま、番犬ぽい事は出来そうだから、まだマシかしらね。掃除洗濯だけなら、学院(ここ)のメイドで充分事足りるもの」 「……駄犬の次は番犬か。随分な言い草というか、巨大なお世話だよ」 ―――その日の夕食後。ベッドに腰掛けたルイズと、床に胡坐を掻いた龍麻の間でこんな感じで続く噛み合わない会話があった夜から、一週間が経過った。 龍麻の朝は早い。 この日も、部屋の主より二時間程先に目を覚ますと、素早く身仕舞を整えて部屋 を出る。 学院内に幾つか在る広場を適当に数キロ程度走ると、続いて通り一般の筋トレメニュー的な各種運動やら瞑想を行う。 それらが済んだ頃には大体、学生連中の起床時間になっているので、水を汲んだ手桶を提げて部屋に戻ると、朝に弱い雇い主を大声で呼び、あるいは揺さぶり、毛布を剥ぎ取って起こす。 起きた後に続く、洗顔やら寝衣から制服への着替えに関しては、喧嘩同然の言い合いと睨み合いを経て断固龍麻が拒否したので、ルイズ自身がしていた。……代価として、龍麻は朝飯抜きというリスクを抱えたが。 ルイズが朝飯やら授業に出席している間に龍麻がやる事といえば、主に居室の掃除と洗濯である。 龍麻同様、学院に勤め(馴染みになりつつある)るメイドや使用人達に混じり、シーツやら衣服を洗い、干して、乾いた所で取り込んで畳む。 そういったルーティンワークが一通り片付くと、ルイズの元へ赴く。 大体はルイズに付いて教室の隅で授業を拝聴しているが、直談判の末(事前にお伺いを立てた上で)日の数時間かを技量維持と向上の為の鍛錬に回せる様になっていた。 朝と同様に型をなぞり、構えや足運び等、其れ迄積み上げて来た物を一つ一つ見直し、研ぎ澄ます過程と作業。 ―――まだまだ尻に殻を付けたヒヨコに過ぎない(だろう)ギーシュの奴ですら、あれだけの事をやれる。 なら、複数の系統を重ねより高度で複雑かつ、強力な魔術を行使しうる『ライン』以上の魔術師の力量は、これ迄味方とし、或いは敵として対峙した幾多の『魔人』や人外にも匹敵、あるいは凌駕する脅威だろう……と、いう危機感と警戒心が常に意識の隅に在った。 「ま、正直な話、一日サボったツケを清算うのに、倍以上の時間と手間がかかると考えたらな……」 嫌でも、真剣にならざるを得ない訳で。今日もこうして、貰った藁と襤褸切れを巻いて立てた廃材をサンドバッグに見立て、拳撃を打ち込む事に没頭する。 そして……昼飯時。 「ご馳走さん。皿、返しとくから」 毎度のお粗末な食事を済ませて、そう言いながら厨房の扉を開けて中に入る龍麻を迎えるだみ声。 「『我らの拳』が来たぞ!」 その野太い声は、この学院のコック長であるマルト―親父の物である。 ―――先の決闘騒ぎが終わった直後の事だ。 遅い昼飯を取っていた龍麻の所に、貴族に逆らう事に怯えて逃げてしまった事を誤りに来たシエスタとの会話の後。彼女に案内してもらい厨房へと向かった龍麻だが、決闘の経過が何時、どう伝わったのやら、恰幅の良い油ギッシュな風貌を持つマルトー等厨房の面々は、親切を通り越し下にもおかぬ扱いで迎えたのだ。 (賄い物だが)たっぷりの料理を勧められ、断りきれず饗応を受けた龍麻だが、流石に無料飲食(ただ食い)は気が引けたので、それからは皿洗いや薪割りに水汲みといった諸々の雑用を手伝う代わりに、多少の食物を分けて貰っていたのだった。 「おう、いい時に来てくれたな! 悪いけど片付けの方を手伝ってやってくれよ!!」 「了解だ」 頷くなり、ごったがえす厨房内で若い衆に混じり、動き出す。 ―――生徒や教師連中の食事が終わると、慌しかった厨房も落ち着きだし、そこに詰める料理人達にも一息つける時間が生まれて自分等の食事となるが、龍麻もしっかりそれに混じって相伴に預かっていた。 自分の分を持ってきてくれたシエスタに礼を言ってから、ぽん、と手を打つと早速取り掛かる。 いや、常に出されるモノが家畜の飼料だとするなら、これは質・量共に星付きの内容である。 「……美味いな、こりゃ。正直、店を開けて金を取っても納得できる中身だな」 満足の吐息と共に呟くと、その様を見ていたマルトー親父は娯しげに相好を崩す。 「そりゃそうだ。そいつは貴族連中に出してるのと、同じ物さ」 「成る程。口の奢った連中を満足させなきゃならんのならこの味も納得だし、それだけの物を作れる腕は流石だよな。やれって言われても、なかなか出来る事じゃない」 頷きつつ、世辞抜きで感嘆を洩らす龍麻の前で、マルトー親父は胸を張りつつ鼻息も荒く、まくし立てる。 ……曰く。様々な魔法を駆使して、魔獣を操り、城を築き、果ては土塊から黄金をも生み出しうる魔術師連中は確かに、端倪すべからずな存在だ。 しかし……、こうしてどこにでもある物から、他人を満足させる料理を創り上げる腕も又、一つの魔法だと。 拳を固め、そう力説する様を眺めながら龍麻は相槌を打つ。 「ご尤も。―――ま、昔から産婆と兵隊と葬儀屋にコックは食うに困る心配は無いからな。正直、武術なんぞよりよっぽど、自分と周囲の人間の為になると胸を張れる事だよな」 「いい奴だな! お前は全くいい奴だ!」 等と、龍麻の返事を聞いて、我が意を得た様に喜色満面で頷いている所へ。 「所で……、おっさん」 「なんだ? 『我らの拳』」 「その、『我ら』云々は止めて欲しいんだが」 「どうしてだ?」 「んな、御大層な呼ばれ方をされる様な事はしてない」 「お前は、メイジとそれが操るゴーレムを素手で倒したんだぞ! わかっているのか!」 と、大仰な身振りと声で言いはやすマルトーに、仏頂面で答える。 「俺は只、あの野郎の言い分やら態度が腹に据えかねたから反発しただけで、誰かの為に動いた訳じゃない。第一……結果はどうあれ、事を収めるのに話し合いではなく、自分の意思をゴリ押しして力ずくで解決した時点で、俺とあいつは同レベルだ。その点、反省こそすれどアレの態度をどうこう言ったり、勝った勝ったなんぞと自慢できる様なものじゃ無いね」 と、パンを千切りながらと愛想の欠片も無い声でこぼす龍麻にずい、と顔を近付ける。 「なあ、お前はどこの誰に教えてもらったんだ? 一体どうやったら、お前みたいに強くなれるのか、俺にも教えてくれよ」 龍麻が厨房を訪れると、二回に一回はそう訊ねるマルトー親父であったが、龍麻の返事は素っ気無い物である。 「上辺に騙されない方が良い。“これ”は間違っても真っ当でもなけりゃ、ましてや格好良くも便利な代物でも無いんだからな」 本心からの言葉だったが、それだけでは納得等しないだろうと思い、マルトーに正面から向き直る。 「おっさん、あんたはいい人だ。俺の勝手な頼み事を聞いてくれて、こうして上等な食事も寄こしてくれる。これは謙遜や意地悪でもなく、俺の本音を言わせて貰うが……。そんな風に思わない方が賢い。 俺が言っても説得力など無いかも知れんが、なまじこんな真似が出来た――安易に 力が欲しいなんぞと考えたばかりに――、他人を巻き添えにした挙句、人生と命をドブに棄てた奴は両手両足の指で足りんぐらい大勢居たんだ。俺だって、いつそうなるやら知れたもんじゃ無い」 グラスに入った水を一息に呷ると、再度話し出す。 「それに……。これは本人の意思一つで、あっさり人を傷付け、殺しうる兇器そのものだ。知らなかったら、単なる睨み合いや罵り合いで済んだ筈の事が、教えたばかりに人の生き死にに関わる事態に及ぶ可能性は大いにあるし、いざそうなった時に、俺がその責任を取れる訳でも無い。 これが……一番言いたい事だが。 力 を持ったら、それを使いたがるのが人だ。力を持ったという事に慢心を抱かない奴は、俺も含め『絶対』に存在しないし、更にそれを濫用しないという自制と自覚を保持し続けられる人間なんぞ、そうザラにいるもんじゃないぞ。 ―――だから、俺に何かを教えて貰おうなんて考えはしないでくれ。色々と世話になってるのに、不義理な話で申し訳無いけどな」 長々と、これを真剣に受け取って貰えればいいが…と、思いながら謝絶の色も強く込めて言い終えると、話す間に空になった皿に匙を置く。 「ご馳走様。本当に美味かった。……もし、また用事に使ってくれるなら、声を掛けて欲しいな」 言いながら席を立つと、龍麻は汚れた食器を手早く洗い、棚へと戻す。 「それじゃ、また。今日はこれで失礼するよ」 足早に厨房を後にする龍麻の背中に、「あ、あの、またいらして下さいっ」という声が届く。 声の主であるシエスタに軽く手を挙げて応えながら、龍麻は雇い主が授業を受けている教室へ向かう。 (鍛錬も終わったし、後はあいつに付いて大人しく授業を拝聴するか。こっちの魔術について知っておくのは大事だしな) 考えつつ、向かった先の教室では一人出歩いていた事にお冠な、雇い主の癇癪をぶつけられる羽目になったものの、それも数時間後にルイズの居室の隣で起こった騒ぎを起点としたドタバタに比べたら、微風の様な物であった……。 ―――その晩。まもなく日付も変わろうとする頃。 「まるでサカリの付いた野良犬じゃないの~~~~ッ!!」 蟠る雷雲からではなく、人の咽喉から放たれた雷が室内に響き渡った。 「盛りってな……、お前が考えてる様な事は全然無い! 俺はむしろ、巻き込まれた被害者だ!!」 「ツェルプストーの女に尻尾を振るなんてぇーーーッ! そうね、あんたは野良犬なんだから、野良犬らしく扱わなくちゃね。いいい、今迄甘かったわ」 「そいつは…っ、とわっ……! 鞭で顔面は危ないだろうが! 鞭は!」 「かわすな! この、バカ犬ーーーっ!!」 「少しは人の話を聴け……! 相手の言い分も聴かず、一方的に責め立てて殴りつけるのが、お前等のやり方か!?」 振るわれる鞭の切っ先を龍麻が掴み取り、互いに引っ張り合う間にも二人の怒鳴りあいは続くが、何故にこうなったかというと……。 夜の分の鍛錬を終えてから、風呂で汗を流した龍麻がルイズの部屋に帰る途中。 隣室の住人であるキュルケの使い魔である、あの火トカゲと廊下で鉢合わせしたのがそもそもの発端である。 近づいてきた火トカゲ……フレイムは、龍麻の服の裾を咥えると、付いて来いと言わんばかりに隣室……中途半端に扉が開きっぱなしの……自分の主の部屋へと、龍麻を引っ張り込もうとしたのだ。 ―――振り解こうにもしっかり咥え込んで離さないし、さりとて下手に他人の使い魔に手を挙げる訳にもいかず、仕方なく龍麻はその部屋に足を踏み入れたものの……。 入ってどれ程もしない内に、数秒前の自分の判断を全力で罵倒したくなる気分になった。 真っ暗だった室内の様子が指を鳴らす音を合図に芝居がかった仕組みで照らし出されると、部屋の主が手足を剥き出しにした扇情的な寝衣姿で、微笑と共に鎮座ましましていたのだが。 瞬間、龍麻が感じ取ったのは野郎の本能やら好感どころか、かつての恩師であり敵でもあった夜魔族(ミディアン)の末裔たる女性が漂わせていたのと同種の危険さであった。 こっちに来たら? との誘いをすげなく断り、扉のすぐ近く佇立したまま、相手の出方を伺う。 「……で、こんな時間に呼び込んだ用事はなんなんだ?」 そんな、つっけんどんな声を出すのに、何ら努力や意識は必要なかった。 会話の口火を切ったのは龍麻だが、キュルケの返事はというと今の自分の姿が猥雑に映らないかだの、『微熱』なる自身の二つ名の由来がどうとか言い出すが、それら戯言同然のおべんちゃらには 相槌一つ打たず、左から右へ聞き流す。 片や自身の言葉に一人盛り上がるキュルケは、先の決闘沙汰の様子を見て、龍麻への興味と熱情が湧いた等と言い募ったのだが……。 それは龍麻からすれば「寝耳に水」であり、それ以上に迷惑かつ勝手極まりない言い草であった。 見ず知らずの異性から、俄かに恋しただ何だのと言われただけで、舞い上がる様な年齢でも無く。 自分の容貌を見せ付けたら、誰も彼もが靡き懐柔出来るだろうといわんばかりの思い込みに、他人の節操・品性の程を莫迦にしきったかの様な、その無神経さも癇に障ったし。 何より……一日も早く、何としても『元』の世界に帰るという至上命題が有るのだ。 又、経験上この手の一目惚れだ何だのと言い立て、自分の都合と感情を一方的に押し付けて来る手合いに対して、曖昧さや遠回しな態度に言葉は相手を調子付かせるだけだと、龍麻はどこぞのメキシカンとの出会いの折に熟知している訳で。 溜息をついてみせると、どんなに鈍い人間でも理解できる内容と表現の断り文句を龍麻が口にしようとしたまさにその時。 窓を打つ小音に両者がそちらに視線をやると、窓の外から室内を覗き込む男の姿が在った。 ……そのペリッソンなる男と、キュルケは先約が有ったにも関わらずすっぽかし。 見事待ち惚けを食った相手は、当然ながら理由を聞く為に押し掛けて来た次第なのだが、部屋の主は詫びるどころか、問答無用の攻撃魔術で追い散らす。 「……先約が居るようだから、俺はお邪魔だろ。帰らせて貰うぞ」 部屋を出る理由を見出し、言い終えるやその返事も待たず、踵を返した所へ。 「キュルケ! なんだその男は!!」 先のとは違う、男の怒声が部屋に響く。 つい、足を止めて顔だけ振り向けた龍麻の目の前で、スティックスとか呼ばれたその男も直後に魔術で吹き飛ばされ、蚊トンボとなって墜ちていく様と加害者を、生暖かい目付きで眺める。 (……全く。これじゃ、俺がまるっきり間男みたいじゃないか) 偶々、毛色の違う野郎を見掛けたので、気儘に火傷しない程度に「火遊び」を娯しみたいだけの子供に付き合うような暇や労力の持ち合わせなぞ龍麻の中には微塵も無い。 ……もう、この部屋に居る事自体が危険だと痛感し、龍麻がドアノブを握るのと同時に。 『そいつは誰なんだ!? 恋人はいないって言ってたじゃないか……!!』 なんぞと、背後から異口同音に叫ぶ声と、その野郎共の名を呼ぶ部屋の主の声に重なり、俄かに巻き上がる激しい熱気と男共の悲鳴の合唱を背に、呆れる気すら失せた龍麻は部屋を出たが。 「お」 目の前で待ち構えていたのは、目尻と口角を吊り上げ、引き攣らせた夜着姿のルイズである。 「やたらと煩いから、何事かと思って来て見たら……。あの憎っくきツェルプストー家の女の部屋で、一体何をしてたってのよあんたはーーーーーっ!?」 「此処の住人にコナ掛けられた挙句、痴話喧嘩に巻き込まれかけたんで、逃げてきたんだよ」 開口一番、叩き付けられる怒声に、背後のドアを後ろ指で指しながら、今し方まで繰り広げられていた醜態の内容をうんざり顔で吐き棄てる。 龍麻は単に事実を述べたに過ぎないのだが、それを聞くや否やルイズの表情は般若もかくやな面相に変貌わり、目に見えて青筋が浮かぶ。 「…………おい、どうした?」 全身を戦慄かせながら、小声で「あの女は…!」と呟く様を怪訝に思い、龍麻は声を掛ける。 「来なさい、ヒユウ」 据わった目と、憤激を孕んだ声調でルイズは顎をしゃくり、自室を指す。 龍麻に続いてルイズが部屋に戻ると、ドアに鍵を掛けて龍麻に向き直るや、人間の形をした爆弾が炸裂したのが前述のアレである。 ―――それからの十数分。沸騰する癇気と猜疑の塊と化したルイズ相手に、相手に迎合したり言質を取られる様な事は何一つしてない、言ってないと言うだけの事を言って聞かせ、納得させる為に龍麻は手持ちの忍耐と根気の在庫を総ざらえする事になったが、どうにか落ち着かせる事には成功したのだった。 然る後、どうして其処まであいつに敵愾心を持っているんだ? との龍麻の問いにルイズが答えて曰く……。 互いの実家は、冷戦状態な国の国境線を挟んで隣同士。いざドンパチともなれば真っ先に鉾を交えて、身内を殺し殺されて、しかもここ六代200年に渡って何度も、配偶者や恋人を横から掻っ掠われてるというオマケ付き……。と、いった背景事情を怨恨の念もたっぷりに拝聴したのであった。 「―――そりゃまた、業の深い関係だ事で……」 悪罵と怨み節を聞き終え、呆れと感心を多分にない混ぜた口調で龍麻は呟く。 「……という訳で、キュルケはだめ。禁止」 「禁止も何も、元々あいつに対して興味や関心なんぞ、爪の垢程も持ってない」 その点だけは、力一杯断言してのけた後。 「この話題は此処までで、だ。そんな事より、ずっと気になっている事があって、それについて教えて欲しい事が有るんだけどな」 「なによ」 「俺とアンタ。それにキュルケや先のギーシュとは、初めて会ったその時から互いの意思の疎通が出来るよな?」 「そうよ。一体、それがどうしたのよ」 さも当然の様に腕組みするルイズに向かい、 「これ、読めるか?」 言うと、龍麻は手持ちの紙にペンを走らせ、平仮名、片仮名、漢字、英語に中国語……等を使い、幾つかの文字や単語を書いた紙片をルイズに渡す。 「……なによ、この落書きは?」 一瞥した後、訳が解らないといいたげな表情を浮かべるルイズ。 「俺の母国語と、学校や旅先で習い覚えた言葉だ。内容は全部同じ。俺の名前や日常の挨拶とか」 「文字ぃ? これが? こんなの、子供の悪戯書きだってまだマシよ。最後のは……まだ文字っぽいけど、読もうにも発音や綴りがヘンだわ」 ルイズは紙上の文字の列を指先でつつきながら、唇を尖らせる。 「そう。全く同じ事が俺にも言える。こっちの教育や識字率がどんなのかは分からないが、お前に付いて授業を受けた際に見た、黒板に書かれた文字や教科書の内容。他に酒瓶のラベルの銘の読み方とか、何もかもさっぱり解らん。 ……お互い、知ってる物がこうも異なるのに、こうして問題無く話が通用するのは何故なんだ? どこかおかしくはないか?」 「ふーん……」 初めて気付いたと言いたげな表情でルイズは考え込む。 「もしかしたら……。使い魔として契約した時に、特殊能力を得る事があるって聞いた事があるけど、それなのかしら?」 「特殊能力? ……あれか。前に、視覚やら聴覚を主と共有出来るとか言っていた」 「ううん……そうじゃなくて、例えば、黒猫を使い魔にしたとするでしょう?」 「ああ」 「それたらは、その猫は人の言葉を喋れるようになったりするのよ」 「んーー? 人間程の声帯が無い猫が、契約によって人語を解して喋れるように、か……。――それと同じ事が、俺にも起こったとでも?」 「わかんない。古今東西、人を使い魔にした例は無いし……。だから、何が起こっても不思議じゃないのかもね。異世界とやらから来て、読み書きも出来ない筈のあんたが、こうして自由に話が出来るようになるぐらいの事、あるかもしれないわ」 「便利といやぁ便利だし、頷けなくもないが、そのまま信じ込むのはなぁ……。ま、自分一人で考えて正解が出る様な事でも無い、か」 やれやれと、龍麻が困惑と失望混じりの溜息をついている所に。 「不思議なら、トリスティンのアカデミーに問い合わせてみる?」 「アカデミー? もしかして……学者の集まりみたいな所か?」 「そうよー。王室直属の、魔法ばっかり研究している機関よ」 一度は顔を上げた龍麻だが、続くルイズの説明を聞くや、即座に首を横に振る。 「……やめとく。昔、俺や俺の仲間の存在が、そういう研究者や胡散臭い学者だのいった奴等にバレた時、拉致られて危うく死に掛けたんでな。モルモットや丸太扱いは願い下げだ」 そんな、J・メンレゲや石井四郎の精神的同類が大手を振って闊歩している(かも知れない)組織が在るのなら、人前で 力 を使う事自体が自殺行為と為りかねない。 それきり二人の会話は途切れたが、暫くしてルイズの方から口を開いた。 「ねえ」 「ん? まだ何か、言いたい事でも?」 「あんた、殴ったり蹴ったりする他に、剣は使える?」 「剣?」 「そうよ。それで、どうなの?」 「全くのド素人ではない。敵や味方にも、達人・師範級の腕利きがゴロゴロいたからな。……けど」 「けど……なによ?」 「今迄、俺が使っていたのと同じ様な物がこっちで手に入るとは思えないからな。後、持つなら 持つで、扱いに習熟する為の時間も必要る上に、第一……刃物は趣味じゃない」 ―――あの“遺跡”を巡る闘いの終盤、仲間の一人から託された黄金の剣は残念ながら、荒吐神に引導を渡した直後のゴタゴタの際に喪ってしまっている。 「そう。……わかったわ。あんたに、剣、買ってあげる」 龍麻の返事を聞いて、ルイズは一人頷きつつ、そんな事を言う。 「何なんだ、いきなり?」 「あんたの役目は、わたしの護衛でしょう? 護衛役が丸腰だなんてカッコ付かないし、“あの”キュルケに言い寄られたんなら、命が幾つあっても足りないし。降り懸かる火の粉は自分で払いなさい。わかった?」 「……了解だ。少し早いが、礼を言っとく。有難うよ」 「あんたねぇ……。ありがとうございます、お嬢様でしょ、そこは!?」 耳を劈く声に、「分かった分かった」という感じで手を振ってみせる。 「ホントにもう……! ご主人様に対する口の利きかたがなってないんだから……ッ! ともかくさっさと寝なさい! 明日は虚無の曜日だから、街に連れて行ってあげるわ」 言い捨てると、明かりを消してベッドに潜り込むルイズ。 龍麻も又、いつもの様に壁に背中を預けた姿勢で、毛布を身体に掛けて目蓋を閉じる。 ここ数日、静かだった分の反動が一度に押し寄せたかの様な日だっな……。と、思考の縁で思いながら、龍麻は意識を現実からゆっくりと遮断し、眠りの海に漂わせたのだった。 前ページ次ページゼロの使い魔人
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9412.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百三十九話「四冊目『THE FINAL BATTLE』(その3)」 スペースリセッター グローカービショップ ファイナルリセッター ギガエンドラ デラシオン 隕石小珍獣ミーニン ネイチュア宇宙人ギャシー星人 チャイルドバルタン シルビィ 登場 本の世界を巡る旅も四冊目に突入。四冊目は、かつてコスモスペースで起きた、地球の存亡を 懸けた一大決戦を基にした物語だった。才人とゼロはムサシとともに、ウルトラマンジャスティスと して、将来危険な星になるとして地球のリセットを図る宇宙正義の側に立つルイズに、地球は危険では ないことを訴えかける。そして先んじて地球を攻撃するグローカー軍団に立ち向かうが、次から次へと 湧いてくるグローカーに大苦戦。それを救ったのが、ムサシとコスモスが救ってきた怪獣たち。 地球のために大勢の者たちが行動する光景に、ルイズの心は揺れる。 だが劣勢に業を煮やしたかのように、グローカーマザーが最終形態のグローカービショップに 変形した! 更にファイナルリセッター・ギガエンドラも地球に接近しつつある! 地球最大の 危機が訪れていた! [任務ノ障害ヲ、完全ニ消去] 傷ついた怪獣たちを下がらせたゼロとコスモスは、無機質に与えられた命令を繰り返しながら 迫り来るグローカービショップに向き直り、敢然と立ち向かっていく。 「シェエアッ!」 「ハァッ!」 二人の拳がグローカービショップを打ち据えるが、鋼鉄の巨体は全く揺るがず、効果は 見られなかった。逆にコスモスがグローカービショップの剛腕に弾き飛ばされる。 「ウワァッ!」 『コスモスッ!』 ゼロはグローカービショップのボディをがっしり掴んで押し出そうとするも、グローカー ビショップは背面のバーニアからジェット噴射を行い、ゼロを押し返していく。 恐ろしいことに、グローカービショップの馬力はストロングコロナのパワーすら上回っている! 『ぐッ……! うぅッ……!』 [消去。消去] それでも必死に抗うゼロだったが、グローカービショップの顔面から放たれた光線によって 吹っ飛ばされてしまった。 『ぐああぁぁッ! ぐッ、何のこれしきぃッ!』 どうにか踏みとどまったゼロがガルネイトバスターを発射。しかしそれも、グローカー ビショップの腕から撃ち出される光弾に相殺された。 コスモスペースの宇宙正義を司るデラシオンの駆使する戦闘ロボットの最終形態は、 グローカールークの戦闘力をもはるかに超越している! 『ちっくしょう……!』 肩で息をするゼロとコスモスのカラータイマーは赤く点滅していた。無理もない。最初から 休息もなしに延々と戦い詰めだったのだ。むしろよくエネルギーが持っている方である。 しかし果たして、この消耗した状態で目の前の恐るべき破壊ロボットを倒すことは出来るの だろうか? 「無理だ……。グローカービショップはデラシオンの陸戦最強の兵器。あの状態で倒すこと などとても……」 ルイズは否定するが、それは更に否定される。 「いいや。ムサシは奇跡を起こせる。いや……ムサシたちだけじゃない。俺たちが奇跡を起こす!」 ヒウラだ。気がつけば、元チームEYESのメンバーがルイズの前に集まっていた。 「キャップ、エリア一帯の民間人の避難が完了しました!」 シノブの報告にうなずくヒウラ。 「よし。それじゃあ俺たちの想いを、ムサシに向けて送るぞ!」 「想いを……?」 どういうことか、レイジャと分離して戻ってきたジーンが話す。 「ここにいる者たちのムサシに対する想いをエネルギーに変え、コスモスに送り込む。未来を 信じる想いが……コスモスの命の光となる!」 「未来を信じる、想い……!」 『さぁ、始めるよ!』 高く浮き上がったシルヴィを中心に据えて、ヒウラたちやシャウ、ジーン、ミーニンも 円陣を作った。 「ムサシにもらった、たくさんのもの……今度は私たちが、彼に届ける……!」 シャウの言葉を合図とするように、彼らはムサシとの思い出を脳裏によみがえらせていく。 彼との出会いから始まり、ともに保護活動を行った日々、喜びを分かち合った記憶、時に辛く 苦しい思いをし合ったこと、何度も助け、助けられ、一緒に未来を夢見て……その未来が、 これからも続いていくことを強く信じる……。 その信じる心が、光となって彼らの身体から溢れ出てきた。彼らの光の強さ、そして温かさは、 ウルトラマンジャスティスであるルイズの肌にまざまざと伝わってきた。 ルイズは目を見開く。 「コスモス、ゼロ……これが、お前たちがこの星を守ろうとする理由か。これが……人間の 未来を信じる理由なのか!」 その時、グローカービショップに追い詰められるコスモスとゼロを援護しようと、フブキと ナツキ隊員の駆るテックライガー二号がレーザーを発射した。 「止まれぇぇーッ!」 だがグローカービショップには全く通じず、反撃の光弾が機体をかすめた。 「うわぁぁぁッ!」 それだけでテックライガーが火を噴いて大破し、墜落していく。 『キャップ、脱出をッ!』 「駄目だ脱出できない!」 緊急脱出装置も故障し、テックライガーはまっさかさまに地面に向かって落ちていく。 コスモスとゼロは首をグローカービショップに掴まれていて、助けに向かうことが出来ない! この瞬間、ルイズは羽根状のバッジ、ジャストランサーを手に取り、羽根を二枚に展開して 己の胸に装着した。 「あああぁぁぁぁ―――――――ッ!!」 ジャストランサーから光がほとばしり――ウルトラマンジャスティスに変身して、墜落間近の テックライガーを受け止めて救ったのだった。 『あれはッ!』 『ジャスティス……!』 テックライガーをそっと地面に下ろしたジャスティスは、全身が輝いて姿が変化。胸の プロテクターが金色のものとなる。 これはジャスティスが己の真の正義に目覚めた時に発動する、より力に溢れた戦闘形態、 クラッシャーモード。それまで後悔のために頑なであったジャスティスだったが、ムサシたち 地球人の心と怪獣ともつながっている絆を目の当たりし、遂に彼らの夢と未来を信じたのであった! 「デェアッ!」 ジャスティスはまっすぐ前に伸ばした両腕からダグリューム光線を放ち、グローカービショップの ボディを撃った。破壊することは出来なかったが、衝撃でクローの拘束が緩んでコスモスとゼロは 脱出することが出来た。 そしてヒウラたちの放つ光も集まり切り、シルヴィがそれをコスモスへと送る! 『ムサシ! これがみんなの希望の光だよ! 受け取って!!』 送られた光はコスモスのカラータイマーに吸い込まれて青に戻らせたばかりか、コスモスを 更なる姿へと変身させた! 「セェアッ!」 ムサシの優しさ、強さ、勇気に、皆の未来を信じる希望が加わった、ウルトラマンコスモス・ フューチャーモードだ! 『コスモスも、新しい姿に……!』 片膝を突いているゼロには、ジャスティスがエネルギーを分け与えて回復させる。 『ジャスティス……分かってくれたのか……!』 ゼロの中の才人はジャスティスの顔を、その中のルイズを見つめる。すると才人に一層の 勇気が湧き上がり、ゼロの力となっていく。 『よぉしッ! エネルギー全回復だぜッ!』 力強く立ち上がったゼロは、通常のウルトラマンゼロに変身するとゼロツインソードを その手に握り締めた。その左右にコスモスとジャスティスが並び立ち、グローカービショップと 対峙する! [全テノ障害ヲ、消去] 『はんッ! 消去消去ってうるさいぜ! それしか言えねぇのかッ!』 グローカービショップが両腕から光弾を発射してくるが、ゼロがツインソードでそれを ばっさりと切り払う。 『でぇあッ!』 その間にコスモスとジャスティスが超スピードでグローカービショップの背後を取り、 ジャンプからの同時キックでグローカービショップのバーニアを粉砕した。 「タァァッ!!」 これでグローカービショップは突進攻撃が行えなくなった。機動力を失ったグローカー ビショップを、着地したコスモスとジャスティスが振り向きざまに蹴り飛ばす。 「デェアッ!!」 新たな姿となったコスモスたちのパワーに押されるグローカービショップだが、やはり 宇宙正義の最強の刺客ロボットは伊達ではない。右腕でジャスティスを掴んで締め上げ、 左腕でコスモスを殴り飛ばす。 「ウゥッ!」 「セェェェアッ!」 だがそこにゼロが素早く飛び込んできて、ツインソードを閃かせて腕のクローを切り飛ばした。 これでジャスティスが解放される。 『さっきの借りの分だぜ!』 グローカービショップは腕の光弾発射口をゼロに向けた。 [任務ノ障害ヲ、完全ニ消去] 『てぇぇぇあぁッ!』 そこにすかさずゼロツインソードの斬撃が叩き込まれ、グローカービショップの右腕は 完全に破砕された。 ならばと左腕を持ち上げるグローカービショップだが、そこにはコスモスのコスモストライクが 撃ち込まれた。 「セェアッ!」 光線が左腕も粉砕し、グローカービショップは武器のほとんどを失う。 「ウアァッ!」 更にジャスティスがグローカービショップの懐に潜り込んで、相手の巨体を肩の上に担ぎ上げた。 「ンンンンン……! ゼェェアッ!」 投げ飛ばされたグローカービショップがまっさかさまに地面に叩きつけられた。 [消去。消去。消去] それでも止まらず、頭部から光弾をひたすら連射してウルトラマンたちを狙ってくる。 「セアッ!」 それにコスモスが前に出てゴールデンエクストラバリアを張り、光弾をさえぎる。その間に ジャスティスがバトレックショットをグローカービショップの顔面に叩き込む。 「デアッ!」 この一撃によりグローカービショップの攻撃が途切れた。その瞬間、ゼロが叫ぶ。 『今だッ! とどめの一撃だ!』 コスモスとジャスティスは互いの腕を交差し、エネルギーを相乗効果で高めていく。ゼロは タイミングを見計らってツインソードを投擲した! 『でぇぇぇりゃあッ!』 「デアッ!!」 コスモスとジャスティスが放った究極の合体光線、クロスパーフェクションがゼロツインソードに 当たり、加速させてグローカービショップに命中させる! 三人の力を一つに纏めたソードは、頑強な装甲のグローカービショップを一刀両断したのだった! [消、去……消……去……消……] 真っ二つになったグローカービショップはバラバラに爆散。遂にグローカーを全て撃破 することに成功したのだ! しかし、これで終わった訳ではない。むしろここからが本当の正念場なのだ。 『後は宇宙のあいつだけだぜ……!』 ゼロたちが互いにうなずき合うと、大空、その先の宇宙空間へ向けて猛スピードで飛び上がっていった。 「シェアッ!!!」 宇宙空間で地球に迫りつつあるのは、最後にして最大のリセッター、ギガエンドラ。その全長は 一キロメートルを超えるという、ロボットどころか最早超巨大な移動要塞だ。宇宙用テックライガー 三機が先んじてギガエンドラに集中攻撃を浴びせていたが、ギガエンドラは全くスピードを緩めていなかった。 しかもドーナツ型のギガエンドラの中央部に、膨大なエネルギーが集中し出す。とうとう 地球のリセットが開始されようとしているのだ! ゼロたちはその場にギリギリ間に合った。 コスモスがジャスティスに問う。 『ジャスティス、これを止める方法は!?』 『破壊する以外に、方法はない』 ゼロたちはギガエンドラにありったけのエネルギーを叩き込むことに決める。 「オォォォォ……ゼアァッ!!」 「デリャアアアァァァァァッ!」 コスモスとジャスティスがクロスパーフェクションを、ゼロがゼロツインシュートを全力で 発射した! 命中したギガエンドラがまばゆい閃光の中に呑まれる。 『よぉっしッ!』 ぐっと手を固く握ったゼロだが……実際にはギガエンドラは、傷一つついていなかった! それどころか、眼球のようなレーザー砲から莫大な破壊光線を撃って反撃してきた! 『うわあああぁぁぁぁぁぁ―――――――――ッ!?』 ギガエンドラの攻撃の威力はすさまじく、たった一撃でゼロたち三人が簡単に弾き飛ばされ、 大気圏に叩き落とされる。 『ぐあああぁぁぁぁぁぁぁッ! 熱ッ……!』 大気圏の摩擦熱で身体を焼かれる三人だが、ゼロが背後にウルトラゼロディフェンサーを 張って摩擦熱を防ぐ。 『防御は任せろ! 二人はギガエンドラをッ!』 「シュッ!」 ゼロに守られながら、コスモスとジャスティスがコスモストライクとダグリューム光線を 撃ち続けた。……が、ギガエンドラには焦げ目すらつかない! そしてギガエンドラは、遂に最終攻撃を開始。機体の中央から、地球の全てを滅ぼせるほどの 消滅エネルギーを放ってきた! 『やばいッ! ウルトラゼロディフェンダー!!』 ゼロは迫り来る消滅エネルギーに対してウルトラゼロディフェンダーを展開し、エネルギーを 遮断しようとする。 だがあまりに巨大なエネルギーを前に、ウルトラの星の聖なる盾もひび割れ、砕け散って しまいそうになる! 『ぐッ……! や、やらせるかぁぁぁぁ……!!』 ゼロは背面のバリアも維持しながら盾を押さえ、崩壊を必死で食い止める。だがいくら何でも あまりに無理。ゼロのエネルギーが急激に消耗していき、カラータイマーは危険な状態になる。 『ゼロッ!』 『俺たちのことはいい! それより、ギガエンドラを止めるんだぁッ!』 ムサシがたまらず叫んだが、ゼロは攻撃続行を促す。しかしいくらコスモスとジャスティスが 撃ち続けても、ギガエンドラの様子に変化は全く起こらない。 このままでは明らかにゼロの身体が吹き飛んでしまう方が先だ……。だがそれでも、ゼロと 才人はあきらめていない! 『俺たちは……あきらめねぇぜッ! 最後の最後まで戦い抜いて……奇跡を起こすんだぁぁぁぁぁぁぁッ!!』 ゼロと才人の叫びが――ウルティメイトブレスレットの輝きを呼び起こした! ブレスレットがゼロの腕から飛び立ち、宇宙空間でまぶしく煌めいた。その輝きを浴びた コスモスとジャスティスは、導かれるように光へ飛び込む! 「セアッ!」 「デアァッ!」 『!! あれは……!』 コスモスとジャスティスがコンタクトし、二人のカラータイマーが重なり合って……一人の 新たなるウルトラマンが誕生した! 「シェアァッ!」 新しいウルトラマンはゼロに代わって消滅エネルギーをその身に受け止める。それどころか エネルギーを己のカラータイマーに全て吸収し、ギガエンドラに向かって飛んでいく。 『あれは……あれが、伝説に語り継がれる、奇跡のウルトラ戦士……!』 それは、ギャシー星の伝説の中にも存在が語られている。宇宙の大いなる二つの力が出逢う時、 真の姿となって現れる宇宙の神……。 ウルトラマンレジェンド! 「オオオオオ……! デヤァァァッ!!」 ギガエンドラの中心部まで行き着いたレジェンドは、究極技スパークレジェンドを発動。 消滅エネルギーを押し戻されたギガエンドラは内側からボロボロに崩壊していく。 そして最後に、大爆発を起こして塵も残さず消え去ったのであった。 『すげぇ……。これがレジェンドの力……ウルトラの奇跡か……!』 奇跡の力を目の当たりにして、身体のダメージも忘れて呆けているゼロ。そこにレジェンドが 舞い戻ってきて、彼にエネルギーを与えて回復させた。傷つき切った身体も、レジェンドの莫大な エネルギーでみるみる内に再生する。 『あれだけの負傷が治っていく……! ありがとう、ウルトラマンレジェンド!』 ゼロの感謝の言葉に、レジェンドは無言ながらも温かい感情を乗せてうなずき返した。 『――そうまでして、何故人類を救おうとする。伝説の戦士、ウルトラマンレジェンド。 そして未知の戦士、ウルトラマンゼロ』 突然、第三者の声が響いてきた。ゼロとレジェンドが振り向くと――グローカーマザーが 数え切れないほど宇宙空間に浮遊していた。 そしてその背後の空間に七色の光の渦が現れる。それこそがデラシオン。コスモスペースの 宇宙正義の体現者だ。 デラシオンを前にして、レジェンドはコスモスとジャスティスの姿に戻る。同時にゼロの腕に ウルティメイトブレスレットが戻った。 『デラシオン……私は知ったのだ。ウルトラマンコスモスたちと信じた、この星の命たちを』 ジャスティスはデラシオンに訴えかける。 『泣き……笑い……怒り……そして、思いやる心を持つ。この命たち、未来をも含め…… 彼らは、信ずるに足る存在だと』 コスモスもまたデラシオンに語りかける。 『人類は、決して愚かではない。必ず、その非を正すことの出来る存在だ』 そしてゼロが、告げた。 『俺たちは未来を信じ、人間も希望を信じた! これが、その結果なんだッ!』 すると――大量のグローカーマザーが一機、また一機とデラシオンの光の中に消えていく。 『!』 『我らも信じよう、光の戦士たちを……。そして、人類から送られ続けたメッセージを……』 デラシオンが帰っていく。遂に心を動かされて、宇宙正義の決定を取り消して。人間が あきらめることなく送り続けたメッセージが後押しとなって。 それは、EYESが送り続けた言葉……「希望」であった。 ……四冊目の本も無事に完結に迎えることが出来た。救われた地球はその後無事に復興し、 ムサシは計画通りに遊星ジュランへと出発。そして怪獣との共存の道を歩み始めたのであった。 それが、ウルトラマンコスモスが見た地球の歴史だったのだ。 「素敵な話だったな……」 『ああ……。コスモスのたどった道程と人間の希望、しかとこの目で見させてもらったぜ』 才人とゼロは余韻を噛み締めながら、自分たちが完結させた本を手に取りじっと見つめていた。 するとそこにルイズがやってくる。 「サイトさん……」 「ルイズ! 起きてて大丈夫なのか?」 「はい……。今は身体の調子がいいので」 ルイズは才人にこんな話を告げる。 「サイトさん、わたしさっき、こんな夢を見ました」 「夢?」 「夢の中のわたしは、たくさんの人を消し去ろうとするような、恐ろしくもどこか寂しさを 抱えた人になってました。何だか、サイトさんにも迷惑を掛けたような気がして……」 それを聞いてハッとなる才人。今の説明は、ウルトラマンジャスティスになっていたルイズ そのものだ。 やはり『古き本』には、ルイズの心が入り込んでいるのか。それで本体のルイズの夢にも 影響が出たのかもしれない。 「でも……わたしは色んな人と出会うことで、変わっていきました。そして最後にはすっかり 心を改めて、多くの人たちを救ったんです。とても晴ればれとした気持ちで……何故だか、 このことをサイトさんに話したい気分で目覚めました。どうということはない、夢のことの はずなのに……」 不思議そうなルイズに、才人はそっと微笑みながら呼びかけた。 「いや……たとえ夢でも、何か大事なものを心に感じたのなら、それはきっと本当のことだよ」 「……? よく分かりませんが……」 小首を傾げるルイズに、才人はおかしそうに、そしてどこか満足そうにクスクス笑ったのであった。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/916.html
前ページ次ページゼロの使い魔外伝‐災いのタバサ‐ 白月と赤月が浮かぶ、幻想的な夜空。 その夜空を、月光に照らされた複数の黒い影が飛んでいる。 その影はけたたましい叫び声を上げながら翼を大きく羽ばたかせ、目的地へ向かっていた。 その影の中の、80メイルをも超える巨大な個体の背中で、青く短い髪をなびかせ、少女が悠然と本を広げている。 影達の主人、シャルロット・エレーヌ・オルレアン、『雪風のタバサ』である。 タバサは本から顔をそらし、周囲を飛ぶ影に向かって一言呟く。 「うるさい」 影達はタバサの呟きを聞き、一斉に叫ぶのをやめる。 主人の機嫌を損ねてしまえば、食事を抜かれてしまうからだ。 辺りに静けさが戻り、タバサは再び本へ視線を落とす。 その本には、こう書かれている。 『超遺伝子獣』 ―― 超古代文明による遺伝子操作の結果の産物である。 単為生殖ができる、つまり単独で卵を産み、卵から産まれた個体も体長は数メイルあり、しかも仲間をも捕食してどんどん成長する。 頭はやや平たく、幅広くなり、目は目立たない。地上での活動も自由自在である。 地上を走り、翼を振り回して殴り掛かり、低く飛び上がって足の爪で攻撃をかけることもある。 また、自己進化能力があり、成長した個体は眼に遮光板の様な物を持ち、太陽光線も平気になる。 ―― タバサの使い魔達、それは異世界で『災いの影』と恐れられている超遺伝子獣、『ギャオス』であった。 タバサは、成体のギャオスをサモン・サーヴァントで異世界から召喚し、使い魔の契約を交している。 さらに、成体であるため卵が産まれ、産まれたギャオス達にも使い魔のルーンが刻まれていた。 しかも、最初に呼んだギャオスも、新たに産まれたギャオス達もタバサに異常になついており、片時も離れようとしない。 そのため、タバサはギャオス達を率いて目的地であるガリアへ向かっていた。 タバサが本を読み終わると、周りを飛ぶギャオス達が再び騒ぎ始める。 どうやら空腹になっているようだ。 「……ついたらご飯」 タバサの呟きに、ギャオス達は喜び、翼を折りたたみ弓状になると、目的地ガリアへ向かって突っ込んでいった。 ガリアの首都リュティスは、人口三十万を誇るハルケギニア最大の都市である。 その東の端に、ガリア王家の人々の暮らす巨大な宮殿、ヴェルサルテルが位置している。 そこから少し離れたプチ・トロワで、王女イザベラがあくびをしながらタバサの到着を待っていた。 「あのガーゴイルはまだ来ないの?」 「シャルロット様は――」 侍女が告げようとした瞬間、天井を破壊しながらギャオスが轟音をたて落下してくる。 イザベラと侍女達は悲鳴をあげながら慌てて逃げだした。 プチ・トロワの前庭に、無数のギャオスが降り立った。 数匹が勢い余って墜落したようだが、頑丈だから大丈夫だろう。 「お、おかえりなさいませ。シャルロット様」 タバサに敬礼する衛士がいたが、他の衛士はたしなめない。 あまりの出来事に呆然として固まっているからだ。 「この子達に食事を」 タバサは敬礼をした衛士にそういって、ギャオス達へ顔を向ける。 庭はギャオス達で埋め尽され、上空にも無数のギャオスが羽ばたきながら旋回している。 ギャオス達の食事を任せると、タバサはつかつかと建物の中へ入っていった。 前ページ次ページゼロの使い魔外伝‐災いのタバサ‐